通勤費の不正受給をとがめたが… 「問題ないでしょ?」と社員

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   都の職員が24年間にわたって、通勤手当を不正受給していたとして停職15日間の懲戒処分を受けた。「バスの本数が少なかった」ため駅まで自家用車で行き、月1万円のバス代は駅近くに借りた駐車場代に充てていたそうだが、「懲戒処分するほどか?」という同情の声もあがっている。

   ある会社でも通勤の実態を調べたところ、会社から支給された通勤費をそのまま使っていないケースが続出したという。バス代をもらいながら健康のために早起きして徒歩通勤する人もいたが、総務担当は「不正受給では?」と憤っている。

駐輪場を借りて自転車通勤する人も

――広告会社の総務です。先日、都の職員が通勤手当を300万円以上も不正受給していたというニュースがありました。それを聞いて、「ウチでもやってる社員はいるんじゃないか」と思いました。

   実際、郊外から通勤している以前の同僚で、通勤にバスを使っているはずなのに、実際には奥さんが駅までクルマで送り迎えする人がいたからです。そこで、駅までのバス代を支給している社員たちに実態を聴き取りしてみました。

   すると、やはりバスを使っていない人が結構な割合でいることが分かりました。自分で駐輪場を借りて自転車で行く人が多いようです。健康のために早起きして徒歩で通勤し、「バスはほとんど使わない」という人も。

   ニュースになった都職員は、自宅から最寄り駅までバス通勤と届けていたのに、「バスの本数が少なくて不便」と自家用車を使っていたそうですが、これと同じような方法です。

   こういう通勤費の不正受給は、社員に返還してもらうべきだと思うのですが。駅まで歩いているベテラン社員に「それはマズイですよね」というと、「え、別に問題ないでしょ?」という答え。以前からこのようなことは認められていたというのです。

   過去の経緯は分かりませんが、現状は混乱しているといわざるを得ません。経費削減の折、やはり実際に掛かった費用を支払うことにすべきだと思いますが、このような場合はどういう処分や対応ができるものでしょうか――

尾崎 健一(おざき・けんいち)
臨床心理士、シニア産業カウンセラー。コンピュータ会社勤務後、早稲田大学大学院で臨床心理学を学ぶ。クリニックの心理相談室、外資系企業の人事部、EAP(従業員支援プログラム)会社勤務を経て2007年に独立。株式会社ライフワーク・ストレスアカデミーを設立し、メンタルヘルスの仕組みづくりや人事労務問題のコンサルティングを行っている。単著に『職場でうつの人と上手に接するヒント』(TAC出版)、共著に『黒い社労士と白い心理士が教える 問題社員50の対処術』がある。

野崎 大輔(のざき・だいすけ)

特定社会保険労務士、Hunt&Company社会保険労務士事務所代表。フリーター、上場企業の人事部勤務などを経て、2008年8月独立。企業の人事部を対象に「自分の頭で考え、モチベーションを高め、行動する」自律型人材の育成を支援し、社員が自発的に行動する組織作りに注力している。一方で労使トラブルの解決も行っている。単著に『できコツ 凡人ができるヤツと思い込まれる50の行動戦略』(講談社)、共著に『黒い社労士と白い心理士が教える 問題社員50の対処術』がある。
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