「カネより仕事」従業員の熱意に動かされる
彼としては資金が底をつかないうちに、皆で退職金をもらって会社を解散すべきだと考えているようです。「そしたら僕はその資金でラーメン屋でも始めます」と言った彼の目は笑っていませんでした。
このような親子の考え方の違いは、あちこちの企業で展開されている「創業者と二代目との意見対立」の問題といえるでしょう。
長年会社を引っ張ってきた社長は、会社に対する思い入れが人一倍強い。対するご子息は、悲観的で短期的な解決に流れがち。育った時代環境の違いが輪を掛けています。
この手の問題に正解はありませんが、経営者が考えなくてはいけないことは「会社は誰のものか」というステークホルダー重視の観点です。株主たるオーナー一族の意向も重要ですが、数は少なくともそこで働くことで生計を立てる従業員の意向も忘れてはなりません。
そんなアドバイスを社長に耳打ちして別れたところ、元旦に社長から届いた年賀状には「おかげさまで、息子と力を合わせて頑張っています」とありました。
ご子息によると、社内で話し合ったところ、
「従業員は皆『カネより仕事』で一致。仕事への熱意を感じさせる真剣で前向きな語り口に、大きなものを教えられた気がしました」
社員全員で新規受注を取りに行こうと、日々精を出しているとのことでした。