「ポジショニング」が必要なのは「働く個人」も同じだ

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   昨今の日本はモノであふれていて、「これ欲しい」と思えるような魅力的な製品はなかなかありません。どれを取っても大して違いがあるようには見えないからです。

   ただ、そんなモノが溢れる時代でも「違いがある」と思わせる製品はゼロではありません。驚くような低価格を誇る飲食店だとか、個性的なデザインを持つ日用品は、とがった特徴が存在感となって指名されています。

無難な存在はスルーされるだけ

自分で極めるべき「とがり」はどこか
自分で極めるべき「とがり」はどこか

   もちろん、とがった分だけ「これ嫌い!」と思う人も現れるでしょう。とはいえ、とがっていない存在は「好きでも嫌いでもない」とスルーされるだけ。嫌われることを恐れて無難なモデルしか投入できない会社は、生き残ることができません。

   これは個人においても同じことが言えます。「この分野は、あの人に任せたい」と思われるポジションが取れれば、仕事に困ることはありません。

   マーケティング用語で、相手の中に自社製品の特徴を位置づけ、独自の差別化イメージを作ることを「ポジショニング」と言いますが、それを個人にも適用するのです。

   そのときに必要なのは、先ほども書いた「とがった部分」になります。ただ難しいのは、とがった部分を嫌う人も出てくること。そうすると、周囲にうまく認めてもらうためのプロモーションも必要になってきます。

   以前面談したコンサルティングのAさんは、自分では「とがった部分なんてない」と言っていました。職場の評判も「仕事が遅い」「クライアントの現場の意見に振り回されすぎ」というもので、Aさん自身もその点を改善課題と考えていたようでした。

   しかし、過去の仕事を掘り下げていくと、クライアントから「我が社のことをよく理解しているね」と称賛されたことが一度や二度ではないことが分かりました。彼には「現場の声にとことん耳を傾ける」という「とがり」があったのです。

短所や課題と思われていたものがウリになることも

   普通のコンサルタントであれば1日かければ十分と考えるところを、Aさんは3日、4日と足を運んでいました。彼はそういう粘りができる人だったのです。そこで私は、こうアドバイスしました。

「そこはAさんの『とがり』なので、ぜひ極めてください。そうすれば現場の声をトコトン聴いてもらいたいクライアントから、きっとご指名がくるはずです」

   それからAさんには、自分の「とがり」をうまくアピールするための「キャッチコピー」を作ってみてはどうかと言いました。たとえば、

「聞くことに努力を惜しまないコンサルタント」
「あなたの声に耳を傾け、本当の課題を掘り起こします」

といったものです。

   最近の就職活動では「自分にキャッチコピーをつけてください」と質問されることがあると聞きます。要するに「あなたのウリは何ですか?」ということなのでしょう。

   職務経験のない若い人につけさせるのは簡単ではないとは思うのですが、これをうまくアピールできれば、面接担当者にうまく印象づけられるのは確かです。

   学生でさえこういう質問を投げかけられる時代なのですから、社会人になればなおさら「何でも無難にこなします」ではなく、自分の「とがり」を自覚し戦略的にアピールすることはより重要になっているといえるでしょう。(高城幸司)

高城幸司(たかぎ・こうじ)
1964年生まれ。リクルートに入社し、通信・ネット関連の営業で6年間トップセールス賞を受賞。その後、日本初の独立起業専門誌「アントレ」を創刊、編集長を務める。2005年に「マネジメント強化を支援する企業」セレブレインの代表取締役社長に就任。近著に『ダメ部下を再生させる上司の技術』(マガジンハウス)、『稼げる人、稼げない人』(PHP新書)。
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