「読者プレゼント」の実施はもう難しい?
当選者数水増し不正にも、典型的な「不正のトライアングル」が想定できる。
金銭的プレッシャー:「読者プレゼントの商品はかつてメーカーから無料でもらえていたが、最近はそうでなくなった」と関係者はコメントしている。予算を削りながらキャンペーンを続けなければならない、というプレッシャーに直面したのだろう。
機会:「毎回当選者名は発表しているし、実際に届いたかどうかを読者がチェックできない」「会社も容認しており処分されることもない」などと考えれば、「バレないから大丈夫」という認識が高まる。
正当化:「毎回(少なくとも1人は)当選者を出している」「前からやっている」「前任者からの引継ぎどおりやっているだけ」「上司の指示だから」「他の出版社だって多かれ少なかれやってるだろう」等々、身勝手な言い訳はいくらでも考えつく。
「当選者の発表は発送をもって代えさせていただきます」という企業懸賞がいかにあてにならないかについては、以前から指摘があった。3年前にも佐賀のFM放送局がプレゼント用にビール会社から無料提供を受けた新商品の一部を、社員の宴会に使っていた問題が発覚したこともあった。
プレゼントを提供するスポンサー側には、賞品がどのように使われたかを何らかの方法で確認したいというニーズがあるが、個人情報の授受の問題もあり、ノーチェック状態に置かれる場合がほとんどだという。
読者の信頼を回復するには抽選過程を公開するなどの方法も考えられるが、それでも実際に発送されたかどうか確認することは容易ではない。秋田書店の一件は、読者プレゼントを存続の危機に追いやってしまうと考えるのは大げさだろうか。信頼を失うことがどれだけ重大なことか。同社の経営陣は遅まきながら痛感しているはずだ。(甘粕潔)