内閣府の「男女共同参画白書」2013年度版は、冒頭で「我が国の経済分野において、女性はいまだ十分にその能力を発揮できていない」と問題提起し、日本経済再生において女性の活躍は欠かせないと位置づける。
女性の就業率は海外主要国とほぼ同水準だが、管理職に占める割合が国際的に低い点を指摘。成長戦略で「女性役員増」に焦点を当てた。
国内の企業で役員や課長クラス以上の管理職に就く女性の割合は、全体の11.1%。白書で紹介されている米国の43.0%やフランスの38.7%、シンガポールの34.3%に遠く及ばない。
「女性役員4人」はパソナ、ニチイ学館、エステー
2013年8月11日付の産経新聞電子版によると、政府は上場企業を対象に管理職や役員に占める女性の割合を調査し、各社の割合を国のウェブサイトで公表する方針だと伝えた。
国の目標は30%なので、現状比で約3倍増を達成しなければならない。企業の取り組みを公表して、女性管理職起用の積極化につなげたいようだ。
大手企業の女性役員は徐々に増えてはいる。ソニーは5月29日、日本人女性初の執行役員を発表。日本航空は7月に女性の専務執行役員を選出した。
東洋経済オンラインは2月6日、「役員四季報2013年版」に基づいて「女性役員が多い会社はどこか」を特集した。東証1部上場企業の中で最も多い「4人」は、人材サービスのパソナグループ、介護事業のニチイ学館、トイレタリー商品開発のエステーの3社。エステーでは4月に女性の新社長が誕生している。
ただし首相官邸ホームページを見ると、2011年5月現在で上場企業3608社の女性役員は505人、率にして1.2%にとどまっている。
女性管理職が少ない理由として、女性自身が希望しないケースもあるという。前出の白書によると、課長以上への昇進を希望する割合は、男性が一般社員クラスで5~6割、係長・課長クラスで7割に達するのに対して、女性はそれぞれ1割、3割弱と大幅に低い。
残る懸念は「仕事と家庭の両立が困難になる」
女性が管理職になりたがらないのには事情がある。女性の場合、昇進を望まない理由として挙げられたのは「仕事と家庭の両立が困難になる」が一般社員クラスで40.0%、係長・主任クラスでは42.5%にのぼる。
男性がいずれも20%以下なのに比べて、倍以上だ。「イクメン」が増えてきたとはいえ、男性の育休率が低いことを考えると「昇進しすぎると、仕事も家事も育児も自分の肩に重くのしかかってくる」懸念が払しょくできない限り、昇進に二の足を踏んでも不思議ではない。
「周りに同性の管理職がいない」という理由も、男性と大きく異なる点だ。「女性上司」というモデルがなく、自らが開拓者となるには並々ならぬエネルギーが必要となる。
やはり「仕事と家庭の両立」という課題をクリアするためのブレイクスルーがないと、「女性役員30%」という数値目標が単なるアドバルーンで終わってしまう恐れはある。