日本のフリーランスが、東南アジアへ大量に移住する日

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   オフショア開発やアウトソーシング、クラウドソーシングという言葉がまた注目を浴びています。新興国に仕事を格安で発注することが容易になっています。

   価格破壊が進んでいて、日本人は戦々恐々としています。どんどん過当競争になって、単価が下がっています。以前話題になりましたが、ロゴの制作がひとつ5000円といったものも。行きつくところまで行きついた、ということでしょう。

   定型的なITの開発やデザイン、翻訳や会計処理といった新興国の人でも十分できる仕事は、新興国単価に向かってどんどん価格が下がっていきます。このことに、日本が食えなくなると怒る人もいます。

グローバル化に反対するにも政府のカネは有限

仕事がグローバル化しているなら、自分もグローバル化すればいい
仕事がグローバル化しているなら、自分もグローバル化すればいい

   一方で、新興国の人から見ると逆になります。農業や工場で働くのではなく、より単価の高いホワイトカラーの仕事をネット上で受注できるようになったのですから。彼らは、その単価でも収入は増えているのです。

   かつては仕事が国境に閉じていたために、こういうことはなかったわけです。国境を開いたのは、いわずもがなIT技術。ITが世界をフラット化するとは、こういうことです。

   途上国の人は二重に有利です。先進国から仕事を受ければ報酬は上がっていくのに、自国の物価は安いままです。相対的にどんどん豊かになります。

   先進国の人は二重に不利です。新興国に仕事を奪われ単価が下がるのに、自国の物価は容易には下がりません。相対的に暮らし向きはどんどん悪くなります。ですから、先進国の人は悲鳴をあげています。これに関しては、まだ誰にも答が見えない。

   打開するには、必死にグローバル化に反対するしかないように思います。規制を強化して外国の物が入ってこなくしたり、外国に発注できないようにする。

   政府が価格維持政策をして、国産の技術を採用したり補助金をつける。そして、それでも単価が下がるものに対しては、所得を補填する。もちろん、日本国政府に無限のお金があればそういうこともできるでしょうが、長くは続きません。

   しかし、論理的に考えると、もう一つの選択肢があるのではないでしょうか。つまりグローバル化に逆らわない方法です。

自分もグローバル化すれば恩恵を得られる

   仕事がグローバル化しているなら、自分もグローバル化すればいい。かつてないほど航空券が安くなり、移動や移住の自由が保証されている時代です。自分が途上国の人になってしまえばいい。

   つまり、新興国に住居を移して、そこで日本からオンラインで仕事を貰うのです。そうすれば、新興国の人と同じように、安い物価水準のメリットを受けられますし、純粋な新興国の人よりも日本人相手にはより多くの報酬を請求できます。

   これならよいことづくめです。相対的な暮らし向きは、日本にいる時よりも格段に上がるはずです。

   私が住むベトナムにも、同様の理由で実際に引っ越してきたフリーランス系の人が沢山います。英国、フランス、オーストラリアなどの人で、母国からオンラインでデザインや翻訳、ウェブの仕事を、先進国単価で受注して、そしてベトナムの生活水準で暮らしています。

   彼らは、母国にいたときは辛い生活をして、1日12時間以上働いていたそうですが、現在は少し働けば十分暮らしていけるそうです。「生活はイージーになった」と言っています。

   グローバル化の構造変化は、小手先のトレンドではありません。これに対抗するには、小手先のことをしていては答は見えてこない。グローバル化が原因なら、その構造を逆手にとってこのような移住をするといったことでしか切り抜けられないでしょう。

   いずれ日本のフリーランスが、大量にベトナムやフィリピンなどの国に移住するという未来もあながち空想ではないと思います。(大石哲之)

大石哲之(おおいし・てつゆき)
作家、コンサルタント。1975年東京生まれ、慶応大学卒業後、アクセンチュアを経てネットベンチャーの創業後、現職。株式会社ティンバーラインパートナーズ代表取締役、日本デジタルマネー協会理事、ほか複数の事業に関わる。作家として「コンサル一年目に学ぶこと」「ノマド化する時代」など、著書多数。ビジネス基礎分野のほか、グローバル化と個人の関係や、デジタルマネーと社会改革などの分野で論説を書いている。ベトナム在住。ブログ「大石哲之のノマド研究所」。ツイッター @tyk97
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