「丸投げ」が起きる2つのパターン
この手の不正で見られる「現場の責任者に丸投げしていて見逃した」というパターンは、なぜこうも多発するのだろうか。いささか乱暴な分け方だが、仕事が「デキる人型」と「デキない人型」の2つが考えられる。
「デキる人型」の典型例は、会社が高く評価している社員に、過度の期待をかけたり信頼しすぎたりしてしまうパターンだ。そのような立場に置かれた社員がスランプに陥り、保身のために信頼を逆手にとって架空売上などの不正に走るのが典型的である。あるいは、自分は特別待遇だと勘違いして経費を濫用するような不正も起き得る。
一方、「デキない人型」とは、たとえて言えば、会社が地方拠点や子会社に左遷した社員をそこで塩漬けにしてしまうパターンだ。会社側はその社員を厄介払いし、転勤先の上司もできるだけ関わりたくないと放っておく。左遷された本人は一発逆転を焦って不正会計に手を染めたり、不本意な処遇をした会社に対する仕返しの思いから横領などに走ったりする場合が見られる。
センター長はどちらのパターンだったのだろうか? 入社10年でセンター長までは出世したものの、その先に行き詰まりを感じ、こんな所で終わってたまるかという焦りと、センター長止まりで終わるならその役得をしっかりいただこうという打算。調査報告書からだけでは何とも言えないが、両方がない交ぜになった心理状態だったのかもしれない。
ちなみに、センター長の不正は架空売上に止まらなかった。出入りの清掃業者と共謀して、2年間に3000万円近いキックバックも受け取っていたというのだ。不正会計がいつかは見つかるという恐れから自暴自棄になったのか。あるいは、そもそも倫理観が欠如していたのか。「人はなぜ不正をするのか」は奥の深い難問である。(甘粕潔)