「人生の選択肢は多ければ多いほど幸せ」とは言えない難しさ

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   私は、一人でも多くの日本人に「働き方の選択肢」を増やしてもらいたいと思い、日々「セカ就」について情報を発信しています。しかし、選択肢の多さが必ずしも幸福度を高めるとは言えないという意見もあります。

   心理学者のバリー・シュワルツ氏は世界的講演会「TED」に登壇した際、「選択肢が多くなると幸福度が低くなる」という話をしています。選択肢が多いと「他にも最良の選択があるのではないか?」と心配の種を増やし、自分の下した選択にも満足できないというわけです。

選択肢がないキューバ人の「幸福」と「不幸」

「貧しいながらも楽しい毎日」を実践している(過半数の)キューバ人
「貧しいながらも楽しい毎日」を実践している(過半数の)キューバ人

   これと同じことは、私も感じたことがあります。例えば、キューバを訪れたときのこと。職業選択の選択肢が非常に少なく、21世紀になってもガチで社会主義をやっています。多くの人の職業を政府が割り振りし、たとえ野球選手になっても給料は庶民と大差ありません。

   なのに街を歩くキューバ人と話をすると、なぜか満ち足りた顔をしています。仕事の話はほとんどせず、今日あった楽しいこととか自分が食べたい料理の話とか、そんな話題ばかりが出てきます。キューバという国に愛着を持っており、この国で生活する事が好きだという人もすごく多いです。

   ただし物質的には貧しく、手に入るモノは東京の3%くらい。車でちょっと遠出することもまれで、海外旅行なんて夢のまた夢です。彼らの人生の選択肢は非常に少なく、それ故にあきらめに似た開き直りと共に、毎日を歌や踊りと共に楽しく暮らしています。

   しかし、全てのキューバ人が満足しているわけでもありません。私が話をした数十人のキューバ人の中で、半分弱の人は「何が何でもこの国から出たい」と言っていました。自分にはやりたいことがあるけれど、ここでは国に決められたことしかできない。自分の責任で自由に生きたいという人も一定数いるのです。

   キューバ人と比べると、日本に生まれてきた人たちの選択肢は無限と言えるほど多くあります。職業だけを考えても、学校を卒業した後、数千の会社への就業機会がありますし、自分で独立して稼ぐことも仕事をしないでニートをすることも、日本以外の国に行って働く事も現実的に可能です。そのあまりの選択肢の多さに呆然とし、迷ってしまう若者も多いほどです。

「必ず後悔する」ことを受け入れて時代を楽しむ

   選択肢が多いことの弱点は、選択した後、必ず後悔することです。世の中にはパーフェクトに全て成功することはほぼなく、何をやっても辛い事や悲しいことがあります。そういうモノに直面した時、「ああ…やらなきゃよかった…」と思うことは多いでしょう。

   私は「日本で働くか、海外で働くか迷っています」と言われた時には、必ずこう答えます。

「どうせどっちを選んでも、多かれ少なかれ後悔するので自分で選んでください。自分で選んだのなら、後悔しても自分で困難に立ち向かっていけますから」

   日本みたいな豊かな国に生まれてしまったら、選択肢が多いことはもう避けられません。だったら徹底的にいろんな選択肢を吟味し、自分で選んで後悔しまくり、それを乗り越えて行くしかないんだと思います。

   選択肢が多いことのいいところは、自分で選択したことでいい目にあったら、この上なく気持ちいいことです。選択肢のせいで幸福度の平均値は下がっているかもしれませんが、自らの力でものすごく素敵な人生にできるかもしれない。やっかいな時代と国に生まれたのは仕方がないので、その時代をいかに楽しむか考えた方が得策ではないでしょうか。(森山たつを)

森山たつを
海外就職研究家。米系IT企業に7年、日系大手製造業に2年勤務後、ビジネスクラスで1年間世界一周の旅に出る。帰国して日系IT企業で2年勤務後、アジア7か国で就職活動をした経験から「アジア海外就職」を多くの人と伝えている。著書に「アジア転職読本」(翔泳社)「はじめてのアジア海外就職」(さんこう社)がある。また、電子書籍「ビジネスクラスのバックパッカー もりぞお世界一周紀行」を連続刊行中。ツイッター @mota2008Google+、ブログ「もりぞお海外研究所
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