「友だち」抱えて独立するかも!? LINEやめさせたい美容室オーナー

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   友人・知人との交流に最適化されたSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)が利用者を増やしている。高校生の55%がスマートフォンを所有し、半数以上がLINEを利用しているという調査結果もある。彼らはメールもケータイもなかった時代など想像できないだろう。

   あるお店では、スタッフがお客と直接SNSで交流を深めているという。それを知ったオーナーは、もしもSNS上に顧客リストを作られてしまったら「お客を根こそぎ奪われてしまうのではないか」と不安を募らせている。

せめて予約は店への電話にしてもらえないか

――美容室のオーナーです。最近スタッフが空き時間にスマートフォンを熱心にいじっているので、何をしているのか聞くと、お客さんとフェイスブックをやっているとのこと。

   来店してくれたお客さんにお礼を送ったり、当店でカットしたお客が掲載した写真にコメントを残したりしているそうです。スタッフがお客に気遣ってくれるのは、ありがたいと思っていたのですが、

「お店の予約もLINEで来ることが多いですね」
「プライベートで遊びに行く人が増えましたよ」

なんていう話を聞くと、自分の知らないところでスタッフとお客が密につながっているのに不安を覚えるようになりました。

   そこでスタイリストのA君に「せめて予約はLINE経由じゃなくて、店の電話にかけてもらってよ」というと、A君は「えー、それは言えません。指名のお客さんはわざわざ店に電話するより、こっちの方がいいと言ってるんですから」と反論します。

   うちの店の美容師は独立志向が強く、5年程度在籍したら店を辞める傾向があります。これまでもスタッフの退職時に、お客がついていくことがありました。

そこで「顧客リストのコピー禁止」を徹底しているのですが、それもSNSでは無意味になってしまいました。いっそのこと、個人アカウントでお客とつながることを禁止できないものでしょうか――

臨床心理士・尾崎健一の視点
モチベーション低下がサービスの品質に影響を与える

   SNSの会社アカウントを共有する方法もありますが、お客さんの使い勝手はおそらく悪くなるので、個人アカウントの利用禁止はお店にとって得策と思えません。スタッフのモチベーションの低下も招きそうですが、美容室のような接客サービス業は、スタッフのサービスがそのまま店の価値や満足度につながります。いずれ独立するとしても、在籍中は働きやすい環境を整え、お客さんとの良好な関係を維持してもらい、

   お客の利用頻度を高めてもらった方が店のためになるでしょう。

独立したスタッフに顧客を持っていかれるリスクは、以前からあったはずです。オーナーとして考えるべきことは、スタッフの独立後も顧客を引き抜かれないために自店舗の魅力を向上させることではないでしょうか。個人アカウントとは別に、新規顧客開拓や既存顧客の安定のために公式アカウントを設け、店として運用してみることも考えられます。

社会保険労務士・野崎大輔の視点
「お店が取得した顧客情報の流用」は禁止できる

   会社が取得した個人情報は、目的外で使うことが許されません。就業規則などで「お店が取得した顧客情報を個人で使ってはいけない」というルールを設けることは可能です。お客さんの中には、そのお店に来たという意識でサービスを受けている人もいるはずです。それを盗み見て、SNS経由で勝手にスタッフ個人からアクセスされれば「情報管理が甘い店」という印象を与えます。また、お店への予約は原則電話にしてもらうことも可能です。スケジュール表への書き写し漏れによるダブルブッキングの原因になりますし、接客中にスマホを見ることができず連絡を取り損ねることがあるからです。

   ただし、お客さんの同意を得た個人アカウントでの交流を制限するのは難しいでしょう。業務時間中の書き込みは禁止できるかもしれませんが、お客との関係強化を考えれば仕事に支障がない限り黙認してもいい範囲でしょうし、業務時間外なら店が関与できるものではありません。

尾崎 健一(おざき・けんいち)
臨床心理士、シニア産業カウンセラー。コンピュータ会社勤務後、早稲田大学大学院で臨床心理学を学ぶ。クリニックの心理相談室、外資系企業の人事部、EAP(従業員支援プログラム)会社勤務を経て2007年に独立。株式会社ライフワーク・ストレスアカデミーを設立し、メンタルヘルスの仕組みづくりや人事労務問題のコンサルティングを行っている。単著に『職場でうつの人と上手に接するヒント』(TAC出版)、共著に『黒い社労士と白い心理士が教える 問題社員50の対処術』がある。

野崎 大輔(のざき・だいすけ)

特定社会保険労務士、Hunt&Company社会保険労務士事務所代表。フリーター、上場企業の人事部勤務などを経て、2008年8月独立。企業の人事部を対象に「自分の頭で考え、モチベーションを高め、行動する」自律型人材の育成を支援し、社員が自発的に行動する組織作りに注力している。一方で労使トラブルの解決も行っている。単著に『できコツ 凡人ができるヤツと思い込まれる50の行動戦略』(講談社)、共著に『黒い社労士と白い心理士が教える 問題社員50の対処術』がある。
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