多様化する日本の若者たち 画一的で保守的な価値観に閉じこもる中高年

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   最近の学生は内向きだ。保守化が進んでいる――。マスコミの論調はそういうのが多いと思います。そういう人もいるのは確かだと思うのですが、私が外国で接する学生はまるで違う人ばかりです。

   先日食事をした学生は、日本でほぼ終身雇用と思われる政府系の仕事に内定したのにもかかわらず、「なんとなく出た内定先に行くのは怖い」という理由で辞退したそうです。

   そして「これからは中国の時代だから」と中国の大学院を受験。見事に合格して、夏から中国の大学院で学ぶそうです。

日本企業から外資系、起業、グローバルへと広がる選択肢

バブルを知らない世代だからこそ踏み込める世界がある
バブルを知らない世代だからこそ踏み込める世界がある

   1年前までは中国語がまったくできなかったのに、独学で勉強。いまでは日常会話は問題なくこなせるようになったといいます。上海のベンチャー企業でインターンをしながら、私の住むベトナムまで旅して来ました。

   こういうアクティブな学生に何人もあっています。むしろ昔より現在の方が、学生のバリエーションが広い。超内向き学生から超外向き学生まで、本当にいろんなタイプが出現してきています。もうマスコミで言っている学生像でひと括りにすることはできません。

   私が就職活動をした15年以上前は、ほとんどの人は日本で日本企業に就職する発想しかありませんでした。せいぜい日本で外資系企業に就職するというのが、ちょっとした別の選択肢でした。

   その後、企業に就職する選択肢のほかに、起業という選択肢が増えました。1999年以前は若い人が起業するという選択肢はまったくありませんでした。

   そこに東証マザーズができ会社法が改正されて、ネットベンチャーがブームになって若い人にも起業の選択肢ができ、ベンチャーに就職する人も出てきました。楽天に新卒で就職し、その後に起業したGREEの田中氏のような人も現れました。

   そして今度は「セカ就」とよばれるような、日本以外でのキャリアの選択肢が急速にでてきています。冒頭の上海にいった学生も、意識はグローバルです。さらにNPOなどの非営利組織で働くこともこの間に一般的になりました。

バブル世代は若者の多様化に怯えているのでは

   学生にとってのキャリアの選択肢が何倍にも増えるにつれて、学生間の格差が広がり、選択肢の多さの分だけいろんな学生がいる状態になっています。

   超保守的な学生から、上海やベトナムでインターンする学生、ベンチャーを興す学生もいれば、はたまた日本の高校からハーバードに合格し博士号を取って帰ってくる人まで。

   学生間の意識の高低、スキル・語学力や行動力の有無によって、信じられないほどのバラつきが広がっているように思います。もはや「日本の大学生」といったバブル世代が思い浮かべる典型的な学生は存在しなくなっているのでは、というのが私の実感値です。

   しかし、多くの年寄りの世代は、典型的な学生像を作りたがる。というか、そういう学生像がいてほしい。そしてその学生像に対して、自分の過去を振り返ってうんちくを垂らしたい。

   「今の若いモンはなってない」とか「保守化が懸念される」とか、そういうマスコミが好きな言葉を呟きたいだけなのでしょう。しかし若者たちはそんなレールを外れて、思い思いの幸せを追求し始めている。むしろ画一的でなくなってきている学生に怯えているのは、バブル世代なのかもしれません。(大石哲之)

大石哲之(おおいし・てつゆき)
作家、コンサルタント。1975年東京生まれ、慶応大学卒業後、アクセンチュアを経てネットベンチャーの創業後、現職。株式会社ティンバーラインパートナーズ代表取締役、日本デジタルマネー協会理事、ほか複数の事業に関わる。作家として「コンサル一年目に学ぶこと」「ノマド化する時代」など、著書多数。ビジネス基礎分野のほか、グローバル化と個人の関係や、デジタルマネーと社会改革などの分野で論説を書いている。ベトナム在住。ブログ「大石哲之のノマド研究所」。ツイッター @tyk97
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