部下がミスをした時、上司はどう叱ればよいのか――。もはや人材育成の永遠のテーマと言ってもよさそうだ。
ハウツー本やビジネスセミナー、コーチングでも「叱る」方法が解説されている。ところが調査によると、そもそも部下は、叱られることそのものでやる気を失うケースが多いことが分かった。
ビジネス誌は「普段からの人間関係を重視せよ」
日本生産性本部は2013年7月24日、課長職と一般社員それぞれを対象にした「職場のコミュニケーションに関する意識調査」の結果を発表した。上司と部下の意識のずれが垣間見られる。
互いにコミュニケーションが取れているかとの質問には、上司である課長が8割超、部下の立場の一般社員も7割超と高い割合で「はい」だった。
しかし「叱る」の位置づけでは、ギャップは顕著だ。上司は9割近くが「育成につながる」と考えているのに対して、部下は56.8%が「やる気を失う」と回答。双方の思いがすれ違っているのがよく分かる。
たとえ部下が失敗しても、理由も聞かずに怒鳴りつけたり、同僚がいる前で怒ったりしては、育成どころかパワハラと受け止められかねない。とはいえ見過ごせば部下は同じ過ちを繰り返し、上司の管理能力が問われかねない。
ビジネス誌では「叱り方指南」の特集がたびたび組まれている。「プレジデント」2012年6月4日号では、普段から人間関係の距離を縮めておくことが大事だとしている。
上司は定期的に部下と仕事の進め方を話し合い、密に意思疎通を図る。日頃から何でも話せる相手だと認知されていれば、たとえ怒鳴ったとしても「パワハラだ」ととられない、というわけだ。
叱責より問題点と対策を冷静に話し合うべき
日本生産性本部の調査結果では、上司の8割は「部下を褒めている」と答えている。しかし「叱る」への評価のギャップを踏まえると、信頼関係が双方で実現しているのかどうかは微妙だ。
調査結果に対するネットユーザーの評価はさまざまだ。全般的に「怒鳴る」「罵倒」といった、怒りをぶつけるだけで部下のその後の成長につながらない行動にはネガティブな反応が多い。
「上司は自分は叱られたらやる気が出るのかな」
「自分が若い頃理不尽な理由で怒られてたとしても、それを人にやっていい理由にはならない」
叱るよりも「問題点と対策を冷静に話し合うべき」とそもそも叱責など不要との指摘も見られた。
調査では、上司に「部下や後輩の育成に自信があるか」との設問も投げかけられている。結果は56.3%が「自信がない」。自分の能力については「満足していない」が実に93%に上った。上司たちの悩みも深いようだ。