特定のリアルな場所を持っている企業が、スマートフォンユーザーに訴求する方法のひとつとして、「AR(拡張現実)」技術がある。カメラで撮影した現実とスマホ内の画像をリアルタイムで合成するものだが、従来はコストが高く、採用されにくかったという。
ARアプリを開発しているレイ・フロンティアの田村建士代表取締役によると、従来は2Dのキャラクターや動画を表示させるアプリでも開発条件によっては100万円以上かかる場合があり、3Dだと300万円を超えることもあったそうだ。
しかし最近では、ASPサービスの登場により初期開発費用が不要になり、企業がAR技術をキャンペーンに採用しやすくなっているという。これが理由かどうかは分からないが、ARを使ったアプリがこの夏もいくつか登場している。
写真のシェアを促すJR東日本のフォトアプリ
JR東日本の「行くぜ→来たぜARフォトアプリ」は、特定の駅でスマホによる写真撮影をすると、ご当地のSuicaペンギンがあしらわれたフォトフレームが出てくるというもの。撮影した写真はSNSへ投稿できる。
操作方法は「LIVE SCOPAR」というスマホアプリを、東北地方の30駅と東京駅、上野駅、大宮駅の周辺3キロ圏内で起動するだけ。GPSで位置判定し、自動的に判別するしかけだ。
この写真を撮るためだけに東北旅行をする人は少ないだろうが、SNSによる写真のシェア、拡散を促す方法と言えるだろう。
アパレルのGU(ジーユー)は、AR技術を使った「スイカ割り」のキャンペーンを7月いっぱいで実施していた。アプリを起動してカメラ越しに周囲を見回すと、アプリの中にスイカが登場する。
スマホを振りかざしてスイカを割ると、抽選で100円オフのクーポンが当たるというものだ。主に店舗内のポスターで告知しており、スマホをかざしながら店舗内を歩き回る人たちも見られたという。
GUは今年3月にも、店頭やウェブサイトで見つけた「新ブランドロゴ」にカメラをかざすと、サイコロが飛び出して抽選でクーポンがもらえるキャンペーンを行っていた。コストダウンによって、AR技術の新しい試みは今後も増えていくのではないだろうか。