業務の「人依存」を解消することによるメリット
とはいえ、言われるがままに給料を上げていくと、海外進出のメリットである「人件費の安さ」を享受できなくなります。実際シンガポールや香港はもちろん、中国やタイでも日本人以上の給料を稼ぐスタッフはたくさんいます。
そこで、海外で働く日本人、特に現地のスタッフを管理するマネージャーに求められる事は、業務を「人依存」にしないことです。
優秀なスタッフに仕事を丸ごと任せると、その人が転職してしまうと業務が崩壊します。このようなリスクを避けるために、誰がどんな業務をやっているかをオープンにし、そのやり方を明文化し、誰でも代わりに仕事ができるように仕組み化するのです。
最初は人依存かもしれませんが、定期的にどんな風に仕事をしているかをヒアリングし、それをドキュメントにまとめます。誰かが休暇を取ったときには、ドキュメントを元に他のスタッフに仕事を任せてみて、職務が遂行できるかを確認します。こうして全ての仕事を代替可能にすることで、誰かが辞めたときのダメージを少なくできるのです。
これは、東南アジアに限ったことではありません。日本企業で有給休暇が取れないのも、仕事が人に依存していることが問題である場合が多いです。マネージャーは業務を代替可能にして、誰かが休んだときに穴が埋められるようにしておくと、有休が取りやすい部署を作る事ができ、部下に感謝されると思います。
こうやってマニュアルを作った経験は、転職した先のオペレーションが上手くいってなかった場合の改善策としても応用できます。明文化は骨の折れる仕事ではありますが、会社にとっても部門にとっても、自分自身のキャリアチェンジにとっても価値があることなので、是非チャレンジしてみてください。
※新刊「セカ就! 世界で働くという選択肢」(朝日出版社刊)では、現地人スタッフとの生々しいやりとりを小説にまとめました。ご一読いただけたらと思います。