日本企業が海外進出する理由はたくさんあります。未開拓のマーケット、土地代などイニシャルコストの安さ、法人税の安さ等々…。これと同じくらい重要なのが、「人件費の安さ」です。
東南アジア途上国でエンジニアなどを雇う場合、多くの場合は月給が2~4万円と言われていますので、日本よりも破格に安いです。しかし実際に雇ってみると、現場ではいろいろ大変です。今回は、その大変さについて書いてみます。
インドネシアは人材流動化まっただなか
アジア進出企業の最大の問題のひとつは、人件費が日々高騰していることです。以前の記事で、ジャカルタの賃金の伸び率が年40%を上回っていると書きましたが、これは最低賃金で働く工場の労働者などの賃金です。
ITエンジニアとしてプログラミングができたり、日本語が喋れたりマネジメントができたりする人材は現地でも引く手あまたで、さらに凄い勢いで給料が上がっています。
日本語がそれなりに話せるあるインドネシア人は、ある日本企業で3か月勤務した後、別の日本企業に転職して給料が1.5倍になりました。その4か月後にまた転職して、さらに1.5倍に。たったの7か月で、1.5×1.5=2.25倍になったのです。
数か月程度の勤務で、スキルが大きく伸びるわけはありません。仕事のスキルなどは大して変わっていないのに需要が高まるので、給料は2倍以上になってしまうのです。
別の日本企業の担当者は、入社開始2か月前に口頭で内定を出していましたが、入社1か月前に正式な契約を結ぼうと連絡をしたら、すでに別の企業に入社が決まっていたとのこと。理由は「こっちの給料は、御社の1.4倍だったから」だそうです。
日本人は終身雇用の慣習が染みついているのか、高い給与を提示されてもなかなか会社を移らない傾向があります。義理人情の文化もあるし、「転職回数の多さ=信頼できない人間」という偏見も一部には残ります。
しかし、多くの国では給与アップやキャリアアップのため、軽やかに会社を移っていきます。年に2回3回と移ることもザラです。どうしても辞められては困る人材は、早めに給料を上げておく必要があります。日本人のように「成果を出したら給料は上がるよ」とか、「20年勤めてたら退職金がたくさん出るから」と言ってもほとんど効果はありません。