現実を受け入れる「心の調整力」が必要になる
小林院長は、うつ症状に悩む人の思考パターンには大きく3つの傾向があるという。
1つめは仕事とプライベートで「ON・OFFを切り替えがきちんと出来ないられないこと」、2つめは最初から最後まで全力で取り組もうとしてしまい「アクセルとブレーキを上手に使いこなせないこと」。3つめは複数の重要事項の「優先順位を状況に応じて的確につけられないこと」だ。
なかでも「優先順位をつけられないこと」は、30代男性のメンタルヘルスにおいて憂慮すべき問題だ。仕事も家庭も上司との付き合いも、とすべてを完璧にやろうとすれば、当然どれかがおろそかになり、ストレスがたまる。
うつになる人の中には、今何が一番大切か、その順位をつけられず、キャパシティを超えたものを自分に要求してしまうケースが多いという。さらに衰えを自覚する年齢だからこそ、「思考の仕方にも注意が必要」だと小林院長は語る。
「大切なのは現実をどう捉えるか。自分の最高の状態、理想の状態をイメージするのではなく、最低をイメージするようにしてみる。それにより最悪の状況を回避するために何をすべきか、冷静に考えることができます。エイジングへの考え方も同様で、20代の頃のイメージを保ち続けるのではなく、今の年齢でのベストな在り方を探すべきです」
考え方はすぐには変えられないが、日頃から意識的に行うことで少しずつ変化させることができる。誰にでも衰えはやってくる。そのことを身にしみて感じる年代だからこそ、現実を受け入れる「心の調整力」が必要だ。それこそが責任が増える30代サラリーマンのメンタルケアに欠かせないことだろう。