また発生したケースワーカーの横領 ストレス対策が急務ではないか

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カウンセリングの導入で健全な就業環境の維持を

   もちろん、大多数のケースワーカーは、弱者保護という使命感をもって懸命に働いているはずだ。しかし、人間だれでもいつ何がきっかけで横領の動機を抱え込むかわからない。費用対効果の問題はあるが、現金事故対策で先進的な取組みをしている金融機関も参考にして、以下のような対策を講じてはどうか。

・ケースワーカーには絶対に現金を触らせない(受給資格審査と支給事務の分離を徹底) ・支給方法は必ず受給者名義の預金口座への入金とする(最近は金融機関による口座開設時の本人確認が非常に厳しくなっており、なりすまし等の不正リスクは減っている)
・担当者以外の職員(できれば監査部門の職員)が定期的に全受給者を抜き打ち調査し(訪問や電話)、死亡、就労などの事実がないかどうかを点検する
・窓口に防犯カメラを設置して、窓口での職員の仕事ぶりを撮影し「見られている」という緊張感をもたせて抑止力を高める(銀行などでは防犯カメラで来店者だけでなく職員の不審な動きをモニタリングするのが一般的になってきている)
・不正を行った支給者、受給者の氏名を公表するとともに、可能な限り厳罰をもって臨み、抑止効果を高める

   そういった管理強化の一方で、「毎日お疲れさま」「よくやってくれているね」という上司のねぎらいや、ケースワーカーに対するカウンセリング制度の導入がストレスを緩和し、健全な就業環境の維持に役立つかもしれない。部下をチェックする厳しい目と、見守り励ますやさしい目。管理職にはそれをうまく使い分ける力量が求められる。(甘粕潔)

甘粕潔(あまかす・きよし)
1965年生まれ。公認不正検査士(CFE)。地方銀行、リスク管理支援会社勤務を経て現職。企業倫理・不祥事防止に関する研修講師、コンプライアンス態勢強化支援等に従事。企業の社外監査役、コンプライアンス委員、大学院講師等も歴任。『よくわかる金融機関の不祥事件対策』(共著)、『企業不正対策ハンドブック-防止と発見』(共訳)ほか。
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