前回に引き続き、海外で就職活動する「セカ就!」する人の一例を挙げてみます。彼女は、高校時代に交換留学で行った海外があまりにも楽しく、それをきっかけにアメリカの大学に進学します。
国際色あふれるキャンパスで送った充実した日々。卒業後もアメリカで働こうと考えていましたが、リーマンショック後の不況は彼女の就活を直撃します。とにかく仕事がないのです。
留学帰りに風当たりが強い「ドメな会社の上司」
資金とビザの関係で失意と共に帰国した彼女は、日本での就活を始めますが、すぐに壁にぶち当たります。なぜ皆と同じリクルートスーツを着なきゃいけないの? 「あなたを色に例えると何色ですか?」とか、ワケの分からない質問してくるんじゃねーよ!
それでも何とか会社に入ると、もっと理不尽なことが待っています。上司は自分がちょっとでもミスすると「海外で英語を習ってきたのに、こんな事もできないのか?」などと嫌みを言います。明らかに周りの同期よりも厳しく指摘されるのです。
なんで私ばっかり。海外であんなに苦労して、充実した時間を送ってきたのに…。そんな恨みが心の中に澱のように溜まっていき、言葉の端々に棘となって現れます。
ドメスティックな会社で、留学帰りの人に風当たりが強くなるのは、よく聞くことです。きっとその原因のひとつは、上司のコンプレックスです。日本国内の需要が落ち、グローバル対応しなきゃいけないと分かっているけど、英語ができない焦りを抱えながら過ごす日々。
そこにやってきた英語ペラペラのあなたに対する嫉妬が、棘になっているのかも知れません。
それに加えて、あなたが海外で苦労して身につけたモノが活かせないという現実。とはいえ会社の業務に関しては自分の知らないことがたくさんあり、嫌みな上司の鼻を明かすような活躍ができるわけでもありません。
どちらも心に負い目を持っており、それがお互いに対する言葉の隅々の棘となってお互いを傷つける。大変不幸な状態になるのです。
「たかが英語」と肩の荷を降ろし、できる仕事を増やす
そんな問題を解決する選択肢のひとつが「セカ就」です。香港やシンガポールの英語が公用語の国での仕事なら国籍なんて関係ない。日本のような細かすぎる慣習なんて気にしている余裕もありません。
ただし、香港やシンガポールではハイレベルな仕事が求められ、卒業してすぐの人が得られる仕事はほとんどないのも現実です。
そこで、一度肩の荷を降ろしてみましょう。「たかが英語。たかが学位」。
英語なんてアメリカでは中学生でも喋れますし、学位だったら会社のおじさんだって持っています。そこに固執しても事態は好転しません。それよりも、仕事をする上で自分に足りないものが何なのかを探し、自分にできることでそれを補うのです。
おじさんが英語のメールで困っていたら、進んで手伝ってあげましょう。外国人からの電話かかってきたら、積極的に取ってあげましょう。そうやって部署の人たちに少しずつ貸しを作るのです。
一方、あなたの足りないものは部署のメンバーたちが持っています。彼らが作った資料を読み、分からないことを教えてもらいましょう。資料にはメンバーのプライドがこもっています。その道のプロをリスペクトし、真摯に教えを請う若者を邪険に扱う人はいません。むしろ喜んで教えてもらえます。
そうやって身につけたスキルと、アメリカで身につけた英語力などのスキルをもってセカ就すれば、きっと面白い仕事に就けます。
他人をバカにしても何も始まりません。自分より優れたところを見極め、その部分を吸収し、自分を成長させる。そうやって成長していくことで、自分の選択肢が増え、自分を活かせる仕事ができるようになるのです。(森山たつを)
※新刊「セカ就! 世界で働くという選択肢」(朝日出版社刊)では、世界で働く人たちの実態をリアルな小説としてまとめました。第二章は海外留学後、アメリカで仕事が見つけられず、地元スーパーで派遣社員をしている女性のお話です。興味のある方はご一読いただけたらと思います。