決算書よりも「社長自身」をきれいにすること
銀行員の融資判断は、最終的には「自行のおカネをこの社長に貸せるか否か」ということ。支店長は「とてもあの社長にはおカネを貸す気になれなかった」と言うのです。
もちろん逆のパターンもあります。決算書上は難しい融資案件であっても、支店長が社長の人物部分を高く評価して、本部を説得し融資を応諾するというケースも多々あるのです。
銀行の支店長は、社長のあらゆる点を見ています。金使いは荒くないか、プライベートが忙しく仕事をおろそかにしていないか、人間関係が危うくないか…等々。
昔は、愛人、ギャンブル、外車は要注意と言われたものです。銀行員は道徳家ではありませんから、それらが悪いと言っているのではなく、分相応を外していないかということが大切なのです。以前サイバーエージェントの藤田晋社長が、「馬とフェラーリには手を出すな」と経営訓として言ったというのは、これと同じ類であると思います。
「ちょっと近くを通りがかったので」などと言いながら取引先を訪問したとしても、それは言いわけであり。たいていの場合、社長の日常を見るための計算された抜き打ち訪問でもあります。
「社長のゴルフはどのぐらいのペースでやられています?」「お酒はどのあたりで飲まれているんですか?」。雑談を投げかけているように見えて、支店長の質問の一つひとつには、社長のプライベートが問題ないかを知る情報収集だったりするのです。
もちろん普段の行動以上に大切なことは、社長自身の人間性であることは言うまでもありません。約束は破らないか、ささいなことでもウソを言わないか、話を大きくするようなことはないか、社員や家族を大切にしているか等々は、基本中の基本でもあります。
銀行から信頼される企業であるためには、決算書内容をきれいにすることよりも、社長自身をきれいにすることであると言っていいでしょう。最初のドラマに話を戻せば、宇梶剛士扮する社長の派手な出で立ちとヤクザな対応では、半沢ならずとも即「アウト」の結論は間違いのないところです。(大関暁夫)