仕事に自信がついて「地味な仕事」を避けたがる人への対処法

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   もしも転職しなくても、同じ会社に勤務しているから同じ仕事だけやれる、とは限りません。むしろ経験を積めば、新しい仕事を任せられるのが当たり前といえるでしょう。

   知らないこと、未経験のことを任された瞬間は緊張もしますが、逆に成長できる機会であったりします。私も長年営業の仕事ばかりしてきたのですが、雑誌の編集長として編集業務を任されたときには勝手が違うので大いに戸惑ったことを覚えています。

「もっと高いレベルで頑張りたい」という意欲が裏目に

「この仕事、今後は後輩に任せてもらえませんか?」
「この仕事、今後は後輩に任せてもらえませんか?」

   そんな新しい仕事も、時間が経過すれば慣れが出てきます。そのとき、人は2つのパターンに分かれた行動に出ます。1つめはマイペース派で「慣れてラクになったのでのんびりやろう」と考えるタイプです。

   おそらくこちらが主流でしょう。誰でも慣れるまでの苦労を踏まえて、楽をしたいと考えるものです。ただ、別の思考で仕事をする人がいます。それがハイスパート派です。

「自信が出てきたぞ。もっと高いレベルで頑張りたい」

と意欲的なタイプ。こういう人は、周囲からすれば頼もしく見えるに違いありません。ある意味で将来が嘱望される期待の人材とも言えます。

   ただ、ハイスパートがゆえに、それが行き過ぎて困った存在になることがあります。それは「目立つ仕事ばかり選り好みをするようになる」ことです。

   仕事に慣れることで自信や勢いがつけば、「目立ちたい」と欲が出てくるのも自然かもしれません。控え目な人が多い時代には頼もしくも感じますが、地味な仕事を避けようとしたり、他人に押し付けるようになると困りものです。

「この仕事は卒業させてください。今後は後輩に任せてもらえませんか?」

と勝手に仕事を割り振ろうとするのです。同僚からは「あの人は自己顕示欲が強すぎる」という不満も出てきます。これはたいへんにまずい状況。遅かれ早かれ、組織で衝突が起きる可能性があります。

「あの人のためなら」と思われる存在になって欲しいと伝える

   では、そんな困った人がいたら、どのように対処すべきか? まずは上司が地味な仕事の大切さを、期待を込めて伝えていきましょう。

   将来のマネジメントへの昇格に備え、「あなたには『あの人のためなら…』と思われる存在になって欲しい。そのためにも、与えられた仕事を一つひとつ丁寧にこなしていくべきではないだろうか?」とアドバイスをしてみたらどうでしょうか。

   目立つ仕事だけじゃなく、地味な仕事を丁寧に取り組んでいる姿こそ鏡、あなたにそうであって欲しい…と伝えてあげましょう。おそらく、打てば響くような行動の変化があるはずです。前向きな人ほど、周囲からの指摘を受け入れてくれやすいのです。

   また、あなたや周囲が普段から目立つ派手な仕事ばかり称えていたら、「何だかんだと言っても目立つ仕事しないと評価されないのか…」と地味な仕事をやる意欲がしぼんでしまいます。「こうした裏方的な仕事で手を抜かないのは大したものだ」と、目立たない仕事の実態を把握して、評価してあげることも大事です。

   タレントの西川きよしさんの「小さなことからコツコツと」ではないですが、現場では目立たない仕事も丁寧にこなしていくことが大事。それにより、その人の期待値は高まり、自然と大きな役割を与えられるもの。是非とも、その意義を丁寧に伝えて期待の人材が高いレベルで活躍出来る支援をしたいものです。(高城幸司)

高城幸司(たかぎ・こうじ)
1964年生まれ。リクルートに入社し、通信・ネット関連の営業で6年間トップセールス賞を受賞。その後、日本初の独立起業専門誌「アントレ」を創刊、編集長を務める。2005年に「マネジメント強化を支援する企業」セレブレインの代表取締役社長に就任。近著に『ダメ部下を再生させる上司の技術』(マガジンハウス)、『稼げる人、稼げない人』(PHP新書)。
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