社会保険労務士・野崎大輔の視点
「異動するのは女性だけ」という慣例は危ない
結論としては、結婚を理由とした異動は直ちにセクハラかどうかは判断することは難しそうです。厚生労働省のセクハラ定義に該当するものが見当たりませんし、明確な判例も出ていません。念のため東京労働局に確認してみましたが、必ずしもセクハラに該当するとは限らないという回答でした。個別のケースについてセクハラかどうか判断したい場合には、裁判に委ねるしかありません。
ただ、銀行のように厳しい内部統制が要求される職場の場合、支店長が懸念しているように夫婦などの身内にダブルチェックを委ねることは、できれば避けたいことではないでしょうか。その点では異動に一定の合理性があります。ただ、そのような業務上の要請がなく、かつ「異動するのは女性だけ」という慣例がある場合には、結婚や出産により職場において不利益な扱いをしてはならないという基本的な考え方に抵触しますので、女性を理由とした嫌がらせという指摘を受ける可能性はありそうです。