結婚後に強制的な「異動命令」 セクハラにならないのか?

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   「マイホームを買うと転勤させられる」――。そんな慣行が残っている企業が、まだ存在するようだ。巨額な住宅ローンを組んでしまった社員は、よほどのことをしても退職しないだろうと、会社に足下を見られているのである。

   ある会社には「同じ部署で社内結婚したら奥さんが異動」という慣例があり、支店長がそれに沿った異動命令を出したところ、女性社員から「これはセクハラだ」とクレームを受けたと頭を抱えている。

「結婚退職が当たり前」より随分進んだと思うが

――金融機関の支店長です。行内の同じ部署内のA君とBさんが結婚し、新婚旅行明けで出勤してきました。そこでBさんに異動命令を出したところ、相談があるということで会議室に呼ばれました。

「なんで私が異動なんですか? ちゃんとした理由を説明してください!」

   当行では同じ職場で結婚した場合、女性には異動してもらうのが通例です。私のころは、女性は結婚退職するのが当たり前でしたので、そこからすると随分進んだものだと考えていたのですが…。

   これまで同じような異動命令でクレームを受けたことがありませんし、A君とBさんにも以前から打診していたことです。そこで、これは行内の通例だというと、Bさんは、

「結婚や女性が理由の異動なら、これはセクハラに当たると思います。業務上正当な理由がなければ、異動には応じられませんから!」

と反論してきます。

   とりあえず、行内には書類などのダブルチェックの業務があり、それを同じ部署内の夫婦にやらせるのは不正防止の視点で問題になる、などの理由付けはできる気がします。

   しかしこれまで「セクハラ」という視点はなかったので、そういう問題が起こりうるのかどうか。Bさんと再度面談する前に教えていただきたいと思います――

尾崎 健一(おざき・けんいち)
臨床心理士、シニア産業カウンセラー。コンピュータ会社勤務後、早稲田大学大学院で臨床心理学を学ぶ。クリニックの心理相談室、外資系企業の人事部、EAP(従業員支援プログラム)会社勤務を経て2007年に独立。株式会社ライフワーク・ストレスアカデミーを設立し、メンタルヘルスの仕組みづくりや人事労務問題のコンサルティングを行っている。単著に『職場でうつの人と上手に接するヒント』(TAC出版)、共著に『黒い社労士と白い心理士が教える 問題社員50の対処術』がある。

野崎 大輔(のざき・だいすけ)

特定社会保険労務士、Hunt&Company社会保険労務士事務所代表。フリーター、上場企業の人事部勤務などを経て、2008年8月独立。企業の人事部を対象に「自分の頭で考え、モチベーションを高め、行動する」自律型人材の育成を支援し、社員が自発的に行動する組織作りに注力している。一方で労使トラブルの解決も行っている。単著に『できコツ 凡人ができるヤツと思い込まれる50の行動戦略』(講談社)、共著に『黒い社労士と白い心理士が教える 問題社員50の対処術』がある。
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