前回の記事でも少し触れましたが、日本国内の企業の中にも「出戻り」を受け入れているところがあります。「出戻り」というのは、一度その会社を辞めた人が他の会社で働いた後、再び戻ってくることを指します。
日本の伝統的な企業では、会社はひとつの内輪であり村ですから、途中でその村を出て行った(辞めた)人材は基本的には裏切り者になります。その裏切り者を、もう一度村に迎え入れるということはしません。
仕事や報酬と「勤務年数」が切り離された外資系コンサル
出産や育児休暇、長期休職の後の復帰は、あまり歓迎されないものの事例としては存在します。ただしその間は休暇であって、他の会社で働いていたわけではありません。休んでいても一応はその会社のメンバーなので、復帰が認められます。
しかし日本の会社では、一度別の会社の社員になってしまうと話は別です。その時点で外に出たと見なされて、復帰することは難しくなるでしょう。
一方で、外資系のコンサルなどのプロフェッショナル組織は、出戻りができます。基本的には、その会社の勝手が分かっていて経験もある人材は、即戦力なのでウェルカムです(とはいえ入社面接は改めて行われるので、不合格になることもあります)。
ここには人事制度の違いがあります。外資系コンサルの場合、年齢ではなくシニアコンサルタントとかマネージャーとか、その人の職位によって給与が決まります。
ですから出戻った場合でも、年齢などは関係なく、どの職位で再び採用するかによって給与が決まります。シンプルな給与体系なので、出戻りが容易になっているのです。
一方、日本企業では勤務年数や年齢に応じた給与がベースに存在します。これは一度退職してしまうとカウントが難しい。また「同期」という概念があり、出戻りすれば必ず同期からは遅れてしまいます。
かといって外から出戻った人を同じ処遇にすれば、「中で我慢した同期」からは妬まれるはずです。どこまでいってもウチとソトの論理なのです。
フリーランスの下で社員が働いてもいいのでは
私はオープンな組織であるかを判断する究極の材料として、この「出戻り」ができる会社かどうかというのを見るといいと思います。
出戻りできる企業は、ウチとソトをあまり区別しません。そして、ソトの人とも積極的に協業したりしています。
伝統的な日本企業では、すべて自社内でやるのが基本。外部に委託する場合も、「委託」や「下請け」という関係性をもって、ソトの企業に依頼をします。協業とはいっていても、明確に依頼側(ウチ)と依頼(ソト)される側という関係性があります。
一方で、外資系コンサルティング会社では、社外のプロフェッショナルを契約で呼んで、その人をチームメンバーに入れてプロジェクトを進めることもあります。
外部のフリーランスの契約で参加したコンサルタントがプロジェクトのマネージャーになり、その下に自社の社員があてがわれたりすることもあります。ソトとウチが混在しているのです。
このように組織をソトにオープンにするというのが、これからの時代の組織のあり方であり、そのような組織の間で自由に働くというのが、これからの時代の働き方のひとつのコンセプトなのだと思います。(大石哲之)