ブラック企業を見せしめにしたいなら「証券営業」から始めたらどうか

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追い詰められた社員は「トカゲの尻尾切り」ではないのか

   ノルマが達成できなければ、罵倒されたって当然と思う人もいるかもしれない。しかしこの風土が、結局は顧客を犠牲にすることにつながる。

   例えば最近では、ある大手証券会社の社員が、認知症の女性の投資を不正解約した事件がニュースになった。当該事件に対して会社は社員を非難するコメントを出していたが、本当に個人の責任に帰結する問題なのだろうか。トカゲの尻尾切りではないのか。

   とある口コミサイトには「おばあちゃんに泣かれても売る」と、その非情さを表現する証券会社の女性社員がいた。

   このような証券会社の営業現場は、確かに給与は高いのかもしれないが、「違法」かつ「従業員の尊厳軽視」といった点で、明らかに私の言うところの「真正ブラック」である。しかしユニクロやワタミをブラック企業の代表格と位置づける人たちの中には、

「証券会社に入る奴らは自分で分かってやってるんだから、同情する必要がない」

という論調がある。もしもそれが正しいなら、ユニクロやワタミと何が違うのか。経営者の顔が見えない証券会社は無視し、経営者の顔が見えて絡みやすく叩きやすいユニクロ・ワタミを批判するなら悪しきダブルスタンダードだ。

   歩合制に近い給与体系、一発当たれば大もうけ。だから罵倒されてもクビ同然で追い出されても、身体を壊しても「自己責任」で済まされる。こんなのはおかしい。ここまで違法行為が続出している現状を、放置しておいてよいはずはないのだ。(新田龍)

新田 龍(にった・りょう)
ブラック企業アナリスト。早稲田大学卒業後、ブラック企業ランキングワースト企業で事業企画、営業管理、人事採用を歴任。現在はコンサルティング会社を経営。大企業のブラックな実態を告発し、メディアで労働・就職問題を語る。その他、高校や大学でキャリア教育の教鞭を執り、企業や官公庁における講演、研修、人材育成を通して、地道に働くひとが報われる社会を創っているところ。「人生を無駄にしない会社の選び方」(日本実業出版社)など著書多数。ブログ「ドラゴンの抽斗」。ツイッター@nittaryo
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