一石三鳥の意図を見抜けなかった部長たち
肝心の旅行はと言えば、バナナボート・アトラクション、トロピカル・レストランでのパーティ、現地のショーパブ・ツアーなどなど、大盛り上がりで、社員は皆大満足。
参加した部長たちも、予想外の盛り上がりと楽しさに、完全に脱帽状態。創業20周年社員旅行は、大成功のうちに終了しました。
旅行費用の報告を上げるとき、Sさんは「恐れ入りました。あんなに盛り上がるとは思いませんでした」と言うと、社長は笑いながらこう言ったそうです。
「カネで渡したところで感謝はその一瞬で終わってしまう。来年また決算賞与が出せる保証はないし、もし出せなければモラールダウンだって考えられる。社員にとっては見聞拡大の機会にだってなる。そもそも社員を喜ばせることができなくて、どうしてアミューズメント系のビジネスができるんだい?」
それともうひとつ。新店舗の「アミューズメント・レストラン」のコンセプトを、社員たちをモニターにして調査するのが社長のウラのねらいだったとか。「おかげで次の店のコンセプトがハッキリ見えたよ」と言っていたそうです。
決算剰余金を単に社員に配って終わりではなく、社員を慰労しながら勉強させ、さらに自社の次なるビジネスづくりにも役立てる一石三鳥。Sさんは「ビジネスを大きく発展させる人というのは、無駄な投資は決してしないものなのだな」と、心底感心したように語ってくれました。(大関暁夫)