米国務省が2013年6月19日に発表した世界の人身売買に関する2013年版報告書によると、日本の評価は主要7カ国で唯一の「対策不十分」だった。
6月20日付の毎日新聞夕刊によると、理由のひとつに挙げられたのは、日本人男性が「買春ツアー」を通じて東南アジアの少女買春の買い手になっている点。日本人の出張者が多い中国でも、買春が問題になっているようだ。
接待で無理強いされウンザリする人も
山東省青島にある日本領事館は2012年5月25日、買春行為に関する注意喚起を出している。違法な買春は「治安管理処罰法」の対象となり、適用された場合は15日以下の拘留に加えて5000元(約8万円)以下の罰金を科せられる可能性があるとする。
さらに国外退去や一定期間の入国禁止処分も考えられる。性行為だけでなく、性的マッサージを受けたり買春の合意があったりすれば、それだけで処罰対象となるそうだ。
それでも中国で、女性が接待する店に行って飲食した上に「お持ち帰り」したという話はネット上で比較的容易に見つかる。中国のこの種のサービスのひとつに「KTV」(カラオケボックス)というものがあるという。
店内で女性を指名して、一緒に歌ったりお酒を飲んだりしたうえで、違法な買春を行う店もある。「桑拿(サウナ)」も、入浴だけでは終わらない店が存在する。出張時にサウナで性的なマッサージを受けた様子をブログに書く人もいた。
出張のたびに接待と称して「買春」を無理強いされて、ウンザリしている日本人男性の声もあった。2009年4月の投稿だが、「10回に9回はカラオケに連れてかれて、女の子の持ち帰りを強要されます」と嘆く。
仕事柄断れないので「何もせずに」女性を家に帰すのだという。領事館の説明に照らせば買春の合意があった時点で処罰の対象になり得るので、状況がどうあれきっぱり断るしかないだろう。
2003年9月には広東省珠海で、日本企業からの団体観光客が集団で買春したと中国で大々的に報じられた。報道によれば、買春に及んだのは実に185人に上ったという。団体客が宿泊するホテルに女性をあっせんした疑いで、日本人3人が国際刑事警察機構(ICPO)を通じて国際手配された。
エリートが「ハニートラップ」の餌食に
最近でも2010年10月、広東省広州で日本からの出張者7人が買春容疑で逮捕されたと、同年11月12日号の「週刊ポスト」が伝えていた。「世界的に名の通った」日本企業の社員で、夜に日本人向けカラオケスナックに繰り出した後の出来事だという。
記事では、カラオケスナックの実態は「売春斡旋所に近い」とし、「広州では、日本語ができるホステスも多く、総額で2万円前後かかるものの出張族の人気は高い」と解説。宿泊先のホテルにホステスを連れ込んで、性行為に及ぼうとしたその時に中国の公安が突入してきたという。これでは弁解の余地はない。
さらに中国では、買春行為が国家機密の漏えいにつながったと疑われるケースも発生している。2004年、在上海日本総領事館の男性職員が自殺したが、中国当局から情報提供を強要された疑いがあり、それを苦にした様子が遺書につづられていたそうだ。
この時は上海のカラオケ店で親密になった女性が、中国当局のスパイだった可能性が指摘された。さらに2006年には、海上自衛隊の自衛官が内部機密を持ち出していた事実が発覚。実はこの領事館職員と同じカラオケ店に通ってホステスと深い関係になっていたのではないかと言われている。
買春自体が許されない行為だが、それが「ハニートラップ」で、まんまと引っ掛かって日本の国益を脅かすようなら、それこそ二重の罪だ。