「過激サービスの店」の要求に「トイレで泣いた」
メーカーの北京統括会社の部長として4年間駐在した男性も、現地の製造・販売経験のない本社社員から過大な数字を突きつけられる日常に「胃に穴があくようだった」と話す。
毎週のように本社からやってくる出張者のアテンドも頭痛の種だった。
「ほとんどが『駐在経験なし、中国語もダメ』なのであれこれ面倒をみなければならない。大半は視察程度で、役員の中には『せっかく来たのだから政府高官に会わせろ』と無理を言ってくるケースもあった」
中国人の失笑を買うドンチャン騒ぎもすべて現地法人の負担。中間管理職レベルの出張者から、過激なサービスをする店に連れて行けと命じられたときには「店の臭いトイレの中で泣きました」。もはや迷惑以外の何ものでもない。
中国国内の地域差など基礎的な知識もないまま「評論家たち」に頓珍漢な指示を出されないためには、とにかく業績を上げるしかない。赤字にでもなれば本社が「立て直し」と称して次々と余計なちょっかいを出してくる。
前出の元広告会社の中国法人社長は、ある社員の中国駐在が長引いた末、本社勤務の同期が先に昇進した例を話した。「早く日本に帰りたい」と本社のご機嫌取りに走る社員も出てくる。「そんな上司に当たった部下は、余計うっ憤がたまるでしょう」。
業績悪化から苦し紛れに「中国進出」を唱えるのではなく、トップ自ら現地の事情をよくよく理解しなければ、送り込まれる駐在員のストレスは溜まる一方だ。