留学期間中に一時帰国して就活に励む現状
最近では、留学先の学期によっては「春学期」にあたる1月に渡航し、夏休みをはさんで9月からの「秋学期」を受けて12月に帰国というパターンもあるという。学期間の夏休みは「一時帰国して、日本で就活に励むのです」(太田教授)。
これなら日程上、就活開始に乗り遅れることはなさそうだが、腰を据えて留学先で勉強というのも心理的に難しそうだ。結局学生は、「就活で不利になる」と覚悟を決めて海外に渡るか、就活時期と重ならない2年生の時にトライするような判断を迫られる。ただし、2年生で交換留学できる大学は少なく、それまでに留学できるだけの語学力を身につけられる学生も少ない。
たった1度きりの「新卒一括採用」のタイミングを逃せば、いくら留学を経験して異文化理解力があると訴えても企業には届かない。結局、就活が足かせとなって「留学が学生時代における活動の選択肢に入らなくなっている」と太田教授は話す。
一部の経営トップがグローバル化、グローバル人材の育成を声高に叫ぶ一方で、6~7割の企業が新卒の選考過程で留学経験を考慮・評価するメカニズムをもたないとの調査結果もある。
2012年に経済同友会が実施したアンケートでは、直近1年間の新卒者採用の際に66.3%の企業が海外経験を持つ日本人学生を「募集したが採用せず」、または「募集せず」と回答したと説明する。威勢のいい掛け声ばかりで、実務レベルでは「グローバル経験」など採用時には重視していないことが浮き彫りとなった格好だ。太田教授は、こんな疑問を投げかける。
「日本の慣習だからといって、1年に1回しか幹部候補生を採用しない会社に、日本を含めて世界中から優秀な人材が集まるでしょうか?」