2030年までに人口が2億人を超えると言われているバングラデシュ。しかしこの国がどこまで市場として魅力的かは、まだ疑問符が残ります。
バングラデシュには課題が山ほどあります。そもそもアジア最貧国のひとつと言われており、国民1人当たりのGDPは2012年で世界185カ国中160位(アジアではネパールに次ぐワースト2)。人口は多くとも、1人ひとりの購買力は非常に低いのが現状です。
渋滞や停電、デモなど厳しい問題が頻発だが
インフラも整っておらず、慢性的な渋滞や老朽化した建物の倒壊事故、電力不足による停電など、製造業にとって非常に厳しい環境と言えます。
さらに政治や宗教を発端としたデモも頻発しており、私が訪れた時も1週間に3回のデモが起こり、その度に半日外出ができませんでした。デモ隊にオート三輪が押し倒され、人が入ったままの状態で火が付けられている映像がテレビで繰り返し流されていました。
とはいえ、安い労働力と多くの人口を求めてバングラデシュに参入する企業はあとを絶ちません。例えばユニクロです。ユニクロはアジアの他の国々では日本と同じ品質・価格帯で洋服を売っており、現地の人から見るとやや高級店という位置づけになっています。
しかし私が知る限り、ここバングラデシュだけは現地価格に合わせた価格で販売していました。これはノーベル平和賞を取ったムハマド・ユヌス氏率いるグラミン銀行と共同出資している「グラミン・ユニクロ」という会社として進出しているためだと思われます。市内にあるグラミン・ユニクロの店舗は、日本のユニクロとは似ても似つかぬ小ささで、Tシャツが1枚100円程度で売られていました。
その他、繊維業、製造業や商社など、バングラデシュには約100社の日本企業が進出しています。1000社以上が進出しているインドネシアと比べればまだまだ少ないですが、その数は近年着実に増えています。
ただし、バングラデシュで日本人が現地採用されるチャンスはまだ少ないです。ただでさえ会社数が少ないのに、この国の外国人就労規制は厳しく、外国人1人採用するのに製造分野では20人以上、商業分野では5人以上のバングラデシュ人を雇用する必要があります。
道なき道を切り拓くのが好きな人にはチャンスかも
その他、バングラデシュには有形無形の様々なルールがあり、日本の大企業の駐在員ですらビザ取得に苦労するという現状があります。実際、現地在住の日本人はJICA(独立行政法人国際協力機構)が派遣する青年海外協力隊などの海外ボランティアの割合が非常に高いです。
とはいえ、チャンスはゼロではありません。現地に進出している企業に直接アプローチをかけるなど、積極的な行動で職を見つけた人もいます。
現地には、自身でレストランを開業したり、そこでインターンとして働いていたり、グラミンバンクでインターンをしていたり、現地人に日本語を教えていたりと、駐在員以外にも様々な仕事をしている人たちがいました。
著書「裸でも生きる」でおなじみの山口絵理子さんが、鞄を製造する会社「マザーハウス」を設立したのも、ここバングラデシュです。
ここで働いている人は「バングラデシュで働く」ということに強いこだわりを持っている人が多いと感じました。この雑踏に惹かれる人がたくさんいるのです。
市街を外れるとすぐに舗装道路がなくなるような国で、道なき道を自分で切り拓いてチャンスをつかみ取ることが好きな人は是非チャレンジしてみてください。将来なんかいいことあるかもねー♪ じゃあね、ばいばーい!(森山たつを)