社会保険労務士・野崎大輔の視点
未実施の残業時間は翌月以降に繰り越すことができる
残業代(時間外手当)は、毎月実施した分だけ支払うのが原則です。ただし労働者の同意を得て就業規則あるいは個別の労働契約で定める場合には、月の平均残業時間の見込みを踏まえ、毎月定額の「みなし残業代」を支払うことができます。とはいえ、実際にそれを超える残業が発生した場合には、会社はその分の残業代を追加で支払わなければならず、残業代の上限キャップとして使うことは許されません。これを怠ると、退職後に未払い残業代の請求訴訟を起こされるリスクが生じます。
同様に、毎月の「みなし残業代」に相当する残業時間を大幅に下回った状態が続く場合、会社は労働者に未実施分の残業をさせることができます。みなし残業時間と実残業時間の差を翌月以降に繰り越せるとした判例もあります。運用例は少ないですが、この制度を導入する場合には労基署にあらかじめ相談し、就業規則または賃金規程の中で繰越について定め、社員にしっかりと説明した上で同意を得る必要があります。