定時で帰ったら「みなし残業代分くらい働けよ!」と叱られました

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   中小企業で採用されることの多い「みなし残業代」制度。一定以上の残業時間はカウントせず残業代を抑制するという違法な目的で使われることが非常に多いので、禁止すべきという声も聞かれる。

   ある会社では、「みなし残業代」分の時間外労働をせずに営業目標を達成した若手社員が、定時に退社していたところ、上司から呼ばれて叱られたという。その社員から抗議を受けた人事担当者は、どう対処すべきか頭を抱えている。

「課の目標が未達なのに」と課長おかんむり

――製造業の人事です。当社では労働時間管理を効率化するために「みなし残業代」制度を導入し、営業部の社員には一律月30時間分を毎月支払っています。

   先日、営業部のA君から相談がありました。毎月月末になると、課長に呼ばれて「残業時間が足りなすぎる」と言われるのだそうです。

   確かに彼の残業時間は、ここ数か月の間、20時間以内に収まっており、先月は15時間しかありませんでした。しかしA君は納得できません。

「四半期ごとの営業予算も毎回達成しているし、顧客対応も問題ないはず。それなのに『みなし残業代くらいは残業しろ』なんて、課長は全くわけが分からない」

   課長に状況を確認すると、確かに予算は達成しているようです。しかし課長が納得できないのは「同じ部員の中に未達成の人がいるのに手を貸さない」ということでした。

「同僚が未達成なら、全体の目標達成のために自分がもっと頑張るべきなんじゃないの? 少なくとも俺たちの若いころはそうだったよ。そもそも残業30時間以下なら、残業代もらいすぎじゃないか。人事はそれを許していいの? あいつは勘違いしてるんだよ」

   A君の課では、A君以外は全員が予算未達で、課の通期の予算達成も難しいようです。余裕のありそうなA君に更に頑張って欲しいという気持ちは分からないでもないですが、期の途中で仕事を積み増しして残業を強制するのは問題ですよね――

尾崎 健一(おざき・けんいち)
臨床心理士、シニア産業カウンセラー。コンピュータ会社勤務後、早稲田大学大学院で臨床心理学を学ぶ。クリニックの心理相談室、外資系企業の人事部、EAP(従業員支援プログラム)会社勤務を経て2007年に独立。株式会社ライフワーク・ストレスアカデミーを設立し、メンタルヘルスの仕組みづくりや人事労務問題のコンサルティングを行っている。単著に『職場でうつの人と上手に接するヒント』(TAC出版)、共著に『黒い社労士と白い心理士が教える 問題社員50の対処術』がある。

野崎 大輔(のざき・だいすけ)

特定社会保険労務士、Hunt&Company社会保険労務士事務所代表。フリーター、上場企業の人事部勤務などを経て、2008年8月独立。企業の人事部を対象に「自分の頭で考え、モチベーションを高め、行動する」自律型人材の育成を支援し、社員が自発的に行動する組織作りに注力している。一方で労使トラブルの解決も行っている。単著に『できコツ 凡人ができるヤツと思い込まれる50の行動戦略』(講談社)、共著に『黒い社労士と白い心理士が教える 問題社員50の対処術』がある。
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