「会社のクレジットカードを私用で使うな」 当たり前でもルール化する意味

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「文字にすること」でグレーゾーンを狭められる

   不正は麻薬のようなもの。一度味を占めると、もう1回、もう1回と正当化を重ねてしまう。彼女もこれをきっかけに会社のカードの私的利用を繰り返すようになり、請求書を偽造して自分の口座に振り込むなど、さらに悪質な不正にも手を染めるようになっていった。

   4年後に横領額が50万ドルに達したころ、彼女は自分の犯した罪の重みに耐えきれなくなり、自ら上司に不正を告白。正直に言えば許してもらえるかも、という淡い期待もむなしく、刑事、民事、離婚と3つの訴訟に直面することになった。

   ACFEが示す「ビジネス倫理行動規範」のひな型には、会社払いのクレジットカードの利用についてこんな記載がある。

「当社払いのクレジットカードは、従業員の業務遂行の便宜を図るために供与される。当社所定の手続により特に認められた場合以外は、個人的な出費に当社払いのクレジットカードを使用してはならない。個人的な出費に関する請求を受けた場合は、従業員は直ちに支払わなければならない」

   当たり前のことでも、きちんと文字にすることで、正当化の余地が生じやすいグレーゾーンを狭めることができる。そして社員研修で規範の趣旨を丁寧に解説し、監査にも反映させて「違反は必ず見つかる」「違反者には厳しく対処する」という強いメッセージを伝えるとよい。(甘粕潔)

甘粕潔(あまかす・きよし)
1965年生まれ。公認不正検査士(CFE)。地方銀行、リスク管理支援会社勤務を経て現職。企業倫理・不祥事防止に関する研修講師、コンプライアンス態勢強化支援等に従事。企業の社外監査役、コンプライアンス委員、大学院講師等も歴任。『よくわかる金融機関の不祥事件対策』(共著)、『企業不正対策ハンドブック-防止と発見』(共訳)ほか。
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