世は空前の「ゆるキャラ」ブーム。自治体や企業が、可愛らしくて見るものを和ませるキャラクターをこぞって開発し、多くのコラボ商品が生まれている。
秋田県にある梱包資材の販売業者も、ウェブサイトのリニューアルにあたって「ゆるキャラ」に目を付けた。ところが議論を重ねて出来あがったのは、ゆるさからは程遠い人相の悪い劇画調キャラ。ゆるキャラならぬ「わるキャラ」になってしまったのだ。
「前のデザインと見比べて、思わずギョッとしました」
「鬼神の店長代理 ひろこ」
「包装界の朱雀 ともみ」
「仕入の炎龍 かわしり」
おどろおどろしい愛称が付けられた社員の似顔絵が、強力なインパクトを放っている。秋田成幸産業が運営するオンラインショップ「梱包屋どっとこむ」が、2013年6月のサイトリニューアルで起用した。
意味深にあごをしゃくる、ビシッと指を突き出す、悪だくみをしていそうなニヒルな目つき――。どの顔もちょっと近寄りがたい雰囲気がプンプン漂う。どうしてこうなってしまったのか。真相を聞こうと同社に電話すると、店長の佐々木充さんがこう明かしてくれた。
「ゆるキャラ候補は、本当にありました。しかし、よりインパクトが強くて他に埋もれないものを作ろうと進めていった結果、こういう社員キャラが生まれてしまったのです」
以前のサイトでは地元の女性モデルを起用、明るい笑顔で商品をアピールしていた。すっかり様変わりした「わるキャラサイト」に、佐々木さんまでもが「思わずギョっとしました」と言う。
サイトで扱われている商品は、粘着テープや緩衝材にはじまり、梱包用機械、運搬台車と業務用が多く、確かに華やかとは言えない。そこに登場したオリジナルキャラの効果は、早速現れているようだ。
ポータルサイトに紹介記事が載り、ネット掲示板でも「実に悪いな」「極悪非道」と言いたい放題。実は佐々木さんだけは、全く別のタッチで少し頼りない顔に仕上がっているのだが、これも「ゆるいのがひとりいる」とイジられている。本人いわく「自分はオチ担当」だそうだ。