業務に関係のない過酷な研修で「社員の精神力」を鍛えようとする日本企業

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   もしも仕事に「精神力」が必要ならば、精神力の強い人を採用すればよい。しかし日本企業の中には、社員の精神力は「会社が研修で鍛えるもの」と考えるところもあるようだ。どんな研修があるのかと調べてみると、強烈なメニューがいろいろと出てきた。

   日清食品の「無人島サバイバル研修」は、今年で11年目。新任管理職が電気や水道のない無人島に送られ、わずかな食材が提供された状態で2泊3日を乗り切らなければならない。研修の目的は「何もない状況下で『生きる力』を引き出す」とされている。

「チームワークを学んだ」と満足気な参加者もいるが

「精神力」「忍耐力」が必要な仕事が多すぎるのかもしれない
「精神力」「忍耐力」が必要な仕事が多すぎるのかもしれない

   与えられた即席ラーメンを食べたりコメを炊いたりするにも、薪集めや火起こしが必要。スマートフォンをはじめ私物が没収されるため、普段とは全く違う時間をどう過ごすかも課題となる。心身のたくましさを養い、豊かな発想力も鍛えられるそうだ。

   ただしネット上では「これ楽しそうじゃん」「ピクニックだね」という声も。「チキンラーメンは調理しなくてもそのまま食える」と言われれば、確かにそうだ。ムダに火を起こさずに済ませる発想力も問われているのか。

   ハードな研修として有名なのが、自衛隊の生活体験だ。2泊3日の体験入隊で、初日は「基本教練」、2日目午後は50メートル走や懸垂、1500メートル走、最終日は早朝5時から約20キロの「徒歩行進訓練」が用意されている。3日間みっちりと厳しい規律を叩き込まれ、機敏な行動と緊張が求められる。

   自衛隊研修は年に100団体、約2000人が経験しており、ネット上には体験談の書き込みが少なくない。「食事を制限時間内の5分で食べ終えなかった」などの理由で、就寝前に腕立て伏せをさせられる人もいた。ただし最終的には「チームワークを学んだ」「大変だったけど面白かった」と、おおむね満足して終えている人が多いようだ。

   大手化学メーカー、カネカの新入社員研修では、山道や海岸など計15キロのコースを、指定されたチェックポイントを通過しながら踏破する。チームを組んで事前に地図や定規を使い、各チェックポイントの通過時刻を割り出しておかねばならない。

   当日は携帯電話はもちろん、コンパスや時計も使えない。遭難の危険すらゼロではない環境下でメンバー同士が協力し、困難を乗り越えてゴールを目指すのが目的だ。

パワハラ基準の「過大な要求」「精神的な攻撃」に当たらないか

   厳しい研修には賛否両論ある。ネット掲示板には「体験入隊なんて役に立たない」「無能な上司こそ自衛隊に行くべき」といった主張が見られる。一方で「学生の頃にやっておくべき」「人生経験としてはよいのでは」と肯定的にとらえる向きもあった。

   しかし研修の内容は、どうみても業務に直接関係のないものばかり。参加を拒否する人がいてもおかしくない。J-CAST会社ウォッチでも、業務に無関係な内容の研修に反発する女性会社員の声を紹介したところ、大きな反響があった。

   この研修は、駅前や交差点で大声で自己紹介させられ、「自分を捨てきれていない」と判断されると人前でサルやゴリラ、芸人のモノマネをさせられるという内容。読者からは「パワハラと洗脳以外の何物でもない」など、会社に対する批判が圧倒的に多かった。

   厚生労働省の「パワハラ類型」に照らし合わせても、研修の内容には怪しいものがある。例えば類型では「業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制」は「過大な要求」というパワハラとしているが、自己紹介やモノマネはこれに当たるのではないか。

   また、「業務上の合理性なく、能力や経験とかけはなれた程度の低い仕事を命じること」は、「過小な要求」というパワハラに該当する可能性もある。受け取り側の立場からすれば、名誉毀損、侮辱などの「精神的な攻撃」とすら言えそうだ。そもそも「精神力を鍛える」ことを研修の目的に組み入れること自体、困難を精神力で乗り切ろうとする日本企業の後進性を表しているのかもしれない。

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