労働市場を流動化し「労使の目的地」を切り分けるべきだ
サービス残業についても同じで、もちろん組合的にはきっちり払ってもらいたいのはやまやまだが、何か他の予算を削ってまで残業代を請求できるかというと、普通はしない。そう、まさに東京新聞の記事にある、すかいらーく社の労組の対応そのものだ。
対策としては、労働市場を流動化して、労使の目的地を切り分ければよい。会社は株主への分配を追求し、労働者は労働環境の改善と労働者への分配を厳しく要求する。双方の利益が一致した部分では力を合わせ、そうでない部分については真剣な交渉をし、決裂すればお互い実現に向けた行動に出るようにする。
そうすれば労働者は経営のために命を差し出す必要もなくなるし、企業横断的な労組を作ればストも張れるだろう。
日本では年間300人前後が過労死し続けている。これは労災認定された数字だから、実際には氷山の一角に過ぎないはず。にもかかわらず、どの労組もスト一つ打たないし、問題解決のために抜本的な策を講じたという話も聞かない。
労使が「組織の維持=雇用の死守」という共通の目的を共有するとき、実はもっとも重い負担を背負うのは、その組合員自身なのかもしれない。(城繁幸)