馬鹿にできない屋台ビジネス 「就職」も「起業」もしない人の選択肢

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   私はいまベトナムを拠点に生活しています。こちらでとても面白いのは、朝だけ出店する屋台がたくさんあるということです。朝6時から開店し、8時くらいにはもう売り切れて閉店してしまいます。朝の2時間だけの営業で、その後は看板も引っ込めてしまいます。

   朝は屋台で賑わっていたのが、昼には何もなくなる。朝と昼では、まるで景色が違うのです。さらにこの屋台、どのくらい儲かっているのかを計算してみたら、びっくりしました。実は凄まじく儲かっているのではないか。

工場労働者の4倍以上の収入を得る「カレー麺のおばちゃん」

工場に雇われ朝から晩まで働かされるか、それとも自分の屋台で1日数時間働くか(ベトナムにて)
工場に雇われ朝から晩まで働かされるか、それとも自分の屋台で1日数時間働くか(ベトナムにて)

   たとえば、家の隣にあるカレー麺のようなものを出す店。ここは朝6時からお客が来て、7時半には売り切れます。一杯2万ドン(約1USドル)です。これが、朝の1時間半のあいだに30杯くらい売れているように思います。これだけで30ドルです。

   月に25日間営業すると、しめて売上750ドル。原価が3割くらいだとすると、儲けは525ドルになります。普通のお店なら、この中から店舗や従業員の費用を出さないといけませんが、この店は屋台というより民家。家の庭に相当するスペースに机と椅子をちょっとおいているだけです。

   調理器具も、カレーを煮込む大きな鍋が1つだけ。メニューもカレー麺のみで、毎朝作りだめしておけばOKです。そこの家のおばさんがつくっているので、他人に人件費も払う必要なし。家賃も自分の家だから、追加で払う必要なし。

   儲けの525ドルは全部自分の懐に入るわけです。もちろん、毎朝カレーを作って売る労力は掛かりますが、これがどれだけ効率がいいかをお教えしましょう。

   ベトナム人の工場で働くような労働者は、およそ稼ぎが月に150ドルというのが相場です。そんな国で朝に2時間だけカレーを売っているおばちゃんが、月に推定525ドルの儲けを出しているのです。

   計算してみてびっくりしました。これぞ屋台マジック。投資がいらず、支出も少ない商売であれば、ちょっとした売上でも、すごいインパクトがあるのです。

「売上は少ないけどリスクゼロ」でもいいじゃないか

   これはベトナムの例でしたが、日本でもこの屋台のような「スモールビジネス」は見直されてもいいのではないでしょうか。

   たとえば、藤村靖之さんの「月3万円ビジネス」や、ベーコン研究所の「ゲリラ屋台」のように、元手の掛からないスモールビジネスを推奨する人は増えてきています。

   藤村さんは同名の本を出しています。月に3万円しか稼げないビジネスは、大資本が見向きもしないので競争から外れていますが、それを複数組み合わせれば、地方で余裕のある楽しい暮らしができるという提案です。

   本に書かれているのは、「顧客10人の買い物代行サービス」や「平飼いのニワトリの卵を1日20個売るビジネス」「ツリーハウスでカフェを運営」など。

   いままでの仕事のあり方は、「企業に就職するか」、もしくは「大きなリスクをとって大きく儲ける起業するか」の2つしかありませんでした。しかし3つ目の選択肢として、売上も少ないけども、失敗したときのリスクもゼロに近いビジネスをちょこちょこやるという選択肢が、今後は増えてもいいと思います。

   共通して大事なことは、支出の少ないライフスタイルにすること。私の場合、日本国内やネット上でのビジネスで収入を得て、物価の安い海外で暮らすことでクリアしています。東京で生活していては難しいかもしれません。(大石哲之)

◇参考 文中で取り上げた各種団体については、こちらを参照ください。
・月3万円ビジネス http://30000yen.biz/
・ベーコン研究所 http://minakata-science.com/
・ノマド研究所 http://nomad-ken.com/
大石哲之(おおいし・てつゆき)
作家、コンサルタント。1975年東京生まれ、慶応大学卒業後、アクセンチュアを経てネットベンチャーの創業後、現職。株式会社ティンバーラインパートナーズ代表取締役、日本デジタルマネー協会理事、ほか複数の事業に関わる。作家として「コンサル一年目に学ぶこと」「ノマド化する時代」など、著書多数。ビジネス基礎分野のほか、グローバル化と個人の関係や、デジタルマネーと社会改革などの分野で論説を書いている。ベトナム在住。ブログ「大石哲之のノマド研究所」。ツイッター @tyk97
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