武勇伝を話したがる先輩には、あえて懐に飛び込んでみよう

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   誰でも自慢話の1つくらいしたいもの。ときには我慢して聞いてあげたいものですが、自慢話しかしない人や、話し出したら止まらない人の話は、どうしても耐え難い場合もあります。

   先日取材した専門商社の営業Aさんは、入社3年目の若手社員でしたが、先輩たちから自慢話の聞き役にされて辟易としていました。

「しかも好かれているようで、頻繁に聞かされます。逃げたくて仕方ありません。どうしたらいいでしょうか?」

小さな成功体験を「伝説化」されると辟易するが

オレが若いときはなあ…。おい、聞いてるのか!
オレが若いときはなあ…。おい、聞いてるのか!

   武勇伝好きの代表は、3つ年上のBさん。仕事帰りに声がかかって飲みに行くと、間もなく武勇伝が始まります。

   最初は「営業とは…」「仕事とは…」と自分の哲学を語る時間。これくらいは何とか耐えられるのですが、問題はその先です。

   居酒屋でアルコールが入ると、スイッチも入るのでしょう。「上司と言い争うなんて当たり前。掴み合いの喧嘩もよくやったものだ」と威勢のいい話が出始めます。

   でも本当は、職場で威勢のいい姿なんてみたことありません。むしろ上司に叱られ、従順な姿勢を示す場面ばかり。それでも「そうですね」「Bさん凄いですね」と称えておけば気持ちよく話が続きます。そしてついには

「あの“伝説の契約”をひとりで獲得した」
「社長から期待されて一緒に飲みにいくこともよくある」

という話になるのですが、実際のところ小さな成功体験を伝説化しているとしか思えません。聞き役が続く日々にAさんは「もう無理」と感じていますが、Bさんの誘いをすべて断るのは難しいものがあります。

   とはいえ「耐え難いから会社を辞めよう」と判断するのは性急です。そんな困った先輩たちと同じ職場にいる期間は、そう長くはないものです。実は私も新入社員のときに、武勇伝好きの先輩に付き合わされて閉口した時期が1年以上続いたことがありました。

   そのときは「勘弁してほしい」とギブアップしそうになりましたが、追い詰められた私は発想の転換をしてみることにしました。「思い切って懐に入ってみようか…」

調子のいい相づちやめて本心を聞き出す

   武勇伝ばかり話している人は、本音では「人に慕われること」を求めています。どこかさびしいのです。「武勇伝が多い=劣等感のある心理」と踏まえておくべきです。

   自分を認めて欲しいと思っている意識の人は、逆に大抵の人から避けられてしまいがちです。そこで私は、あえて「いろいろ教えてください」と切り出して話を聞く努力をしてみました。

   ただし、調子のいい相づちや上滑りな褒め言葉は慎み、「質問してもいいですか?」と気になる点について、いろいろと突っ込んで訊ねてみることにしたのです。

   すると先輩は、勇ましい自慢話をやめて、裏側にあった苦労話やそのときの本心などを話し始めました。それまで頑なに片意地張っていた態度が消えたのです。

   それ以来、先輩からは武勇伝を聞くことがなくなり、逆に先輩から悩みを相談される存在にまでなりました。最初の自慢話は、あくまで人間関係を深めようと話題にしていただけだったのでしょう。聞く側にしてみれば、距離を置きたくなるような裏目な話題だったのわけですが…。

   このように、あえて懐に飛び込んでみると学べることが意外とたくさんあったりします。試してみてはいかがでしょうか。(高城幸司)

高城幸司(たかぎ・こうじ)
1964年生まれ。リクルートに入社し、通信・ネット関連の営業で6年間トップセールス賞を受賞。その後、日本初の独立起業専門誌「アントレ」を創刊、編集長を務める。2005年に「マネジメント強化を支援する企業」セレブレインの代表取締役社長に就任。近著に『ダメ部下を再生させる上司の技術』(マガジンハウス)、『稼げる人、稼げない人』(PHP新書)。
「高城幸司の社長ブログ」
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