「経験値」を上げさせてもらえない今どきの若者たち

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   ゲームの世界に「経験値」という言葉があります。例えば「ドラゴンクエスト」でモンスターを倒すと、お金だけではなく経験値がもらえます。経験値を貯めるとレベルが上がり、より強いモンスターと闘えるようになります。

   経験値を上げると、より多くのお金をもらうチャンスが得られるということです。同様のことは現実社会でも言えて、たくさんのスキルや職歴を得ることで、自分ができる仕事の選択肢が増えます。自分の好きな仕事、より多くのお金がもらえる仕事を選ぶことができるようになるわけです。

欧米には「無給インターン」も少なくないが

シカゴの巨大メタルスライム(?)。やっつけたら、たくさん経験値がもらえそうです
シカゴの巨大メタルスライム(?)。やっつけたら、たくさん経験値がもらえそうです

   今、若い人が直面しているのが、冒険(職業人生)の最初の段階で経験値を得るチャンスが少ないということです。

   会社に余裕があるときであれば、たいした利益にならない「スライム討伐」のような仕事を若い社員にやらせることで、彼らに経験値を与えていました。会社内の守られた場所で少しずつ弱いモンスターを倒すことでレベルを上げ、やがて強いモンスターと戦えるようになる。こうなってはじめて、会社の利益に貢献できるようになります。

   しかし、今は余裕がない会社が多くなったため、最初から社員一人ひとりに利益を求めることが多くなりました。最初から強いモンスターと戦うことはできませんから、数で勝負です。1日にスライムを1万匹倒すような、膨大な量の単純作業を若手に押しつけるわけです。これが、ブラック企業。

   「スライム討伐地獄」を生き延びた人は、レベルが上がり、より強いモンスターと戦えます。会社の利益に大きく貢献する仕事であれば、数で勝負しなくてもいいので、労働時間は減って収入も高くなるかもしれません。しかし多くの人は、延々と続くスライム討伐に絶望を感じ、倒れてしまいます。

   さらに状況が厳しい欧米では「無給インターン」なんてものも多くあります。「経験値あげるチャンスを与えるから、お金はなしでもいいでしょ」ということで、給料なしで仕事をさせられるわけです。

   一部の人たちは、無給インターンで得たスキルと職歴をもって、より強いモンスターと闘う効率の良い仕事を得ることができますが、無給インターンに耐えられる経済力がない人は手詰まりになってしまいます。

森山たつを
海外就職研究家。米系IT企業に7年、日系大手製造業に2年勤務後、ビジネスクラスで1年間世界一周の旅に出る。帰国して日系IT企業で2年勤務後、アジア7か国で就職活動をした経験から「アジア海外就職」を多くの人と伝えている。著書に「アジア転職読本」(翔泳社)「はじめてのアジア海外就職」(さんこう社)がある。また、電子書籍「ビジネスクラスのバックパッカー もりぞお世界一周紀行」を連続刊行中。ツイッター @mota2008Google+、ブログ「もりぞお海外研究所
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