若手労働者で進行する「お水化」現象 古い経営者には理解できない

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個人のキャリアアップ志向を押し込めても解決しない

   彼は現在の若手転職市場の傾向を、こんな例え話で説明してくれました。

「いずれは自分のお店を持ちたいと、徐々に勤める店のランクを上げながら人脈層を厚くしていくのって、水商売の世界では常識じゃないですか。古い経営者たちは“若年労働層のお水化”が進んでいると理解すべきですね」

   翌月、A社長のところに再度訪問すると、技術者が一人転職を決めたばかりで、社内の浮き足立ちは余計にひどくなったといいます。そこでB社長の話をすると、前回と打って変わって神妙な表情で聞いていました。

「なるほどね。今回動いたヤツは29歳だし、動いた先も外資だ。老舗で2年基礎を勉強して、外資で別のノウハウを吸収。いずれは代理店として独立ってあるかもな。外資ならドライな分、独立後のビジネスライクな関係維持はありだしね」

   “お水化”の流れを前提に、私は社長に「個人のキャリアアップを望む者がいるなら、それを押し込めずに支援する」スタンスを取るべきだと助言しました。

   具体的には、ジョブローテーションを行ってさまざまな業務の経験を積ませたり、年功制を成果主義に移行したり。独立支援的施策として双方の合意のうえで、ある時期から雇用契約を業務委託契約へ移行することも考えられます。

   経営者が考えている「青い鳥」と若手社員が探している「青い鳥」は、実は全く別の鳥である可能性もあるのです。経営者は社員の「青い鳥」の姿をしっかりと捕まえておかないと、思わぬリスクに直面することにもなりかねません。(大関暁夫)

大関暁夫(おおぜき・あけお)
スタジオ02代表。銀行支店長、上場ベンチャー企業役員などを歴任。企業コンサルティングと事業オーナー(複合ランドリービジネス、外食産業“青山カレー工房”“熊谷かれーぱん”)の二足の草鞋で多忙な日々を過ごす。近著に「できる人だけが知っている仕事のコツと法則51」(エレファントブックス)。連載執筆にあたり経営者から若手に至るまで、仕事の悩みを募集中。趣味は70年代洋楽と中央競馬。ブログ「熊谷の社長日記」はBLOGOSにも掲載中。
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