景気が良くなると自己都合退職が増え、悪くなると減る――。中堅以下の企業ではそんな実感を持っている人も多いのではないか。アベノミクスへの期待から、一部の業界や職種では人材の流動性が高まりつつあるという話もある。
ある会社では、30代の働き盛りの社員が人材紹介会社から声を掛けられたという。「もっと高い給料をもらえるはず」と考えたその社員は上司に昇給を頼んだが、会社側は他の社員とのバランスも考えてどうすべきか頭を悩ませている。
人材紹介会社「今より200万円上がる会社ある」
――システム開発会社の人事です。先日、開発部長から「部下のA君から『次回の契約更改で給料を上げて欲しい』と申し出があった」と連絡がありました。
A君は30代前半のプログラマーで、当社のエース級の活躍をしています。ある日、A君のところに人材紹介会社のヘッドハンターからメールが来たのだそうです。
最初は怪しいと思って対応していなかったものの、何度も連絡が来るので根負けして会ったところ、「あなたのスキルや経験なら、今より200万円は上がる会社がたくさんある」と言われたのだとか。
その場では「今の会社には愛着もあるし、この仕事の進め方に慣れているから」と固辞したA君でしたが、200万円上乗せの提示には「正直、心が揺らいだ」のだそうです。
そこで、引き続き会社に残る前提で「200万円の上乗せをしてくれないか」という申し出があったというわけです。しかし当社でその水準の金額を支払えるのは、部長クラスです。
かといって若くて経験不足のA君にいきなりマネジメントを任せることは会社として決断できませんし、A君自身も望んではいないことでしょう。
開発部長は「ここで辞められると仕事に差し支えるから、特別賞与を出すとかで調整できないものかね」と引き止めたい気持ち満々ですが、特別な実績を上げていないのに賞与は出せません。何かいい方法はないでしょうか――