部下に仕事を「任せる」ということ 上司に求められる2つの視点

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権限と責任を与え「人を育てる」視点が欠かせない

   A社長は「部下に任せる」ことによって自分に何が求められるのか、よく理解していなかったようです。

   「部下に任せる」ことは、単に「やれ」と指示して終わりではないのです。成果の責任範囲を上司があらかじめ決めたうえ、部下に責任に見合った権限を与えて具体的なやり方は委ねなければなりません。そうしなければ、仕事の経験が部下のものになりません。

   A社長が「お前らやってみろ」といったとき、あらかじめ成果の責任範囲を決めていたでしょうか。権限を与えて、具体的なやり方を委ねたでしょうか。どちらも決めずに単に「やってみろ」では、部下は手も足も出ないでしょう。

   また、「仕事をさせながら人を育てる」という視点も必要です。これまで社長が全部自分で決めてきたのだから、急に部下にやらせてもできるようにはなりません。

   私は、相手の力量をみてやらせる仕事を選び、進行を気にしながらフォローするやり方を「任せる」、自分の仕事をただ丸投げするのを「振る」という言葉の使い分けをしています。その話をB部長にしたところ、

「それは耳が痛い話です。我々も社長と同じように『振る』仕事しかさせていませんから」

と明かしてくれました。社長のスタイルが部下に伝わり、会社全体が指示待ち文化になっているわけで、組織風土はかなり重症のようです。また近々A社長にお目にかかる予定があるので、今度はかなり突っ込んだお話をしなくてはいけないと思っています。(大関暁夫)

大関暁夫(おおぜき・あけお)
スタジオ02代表。銀行支店長、上場ベンチャー企業役員などを歴任。企業コンサルティングと事業オーナー(複合ランドリービジネス、外食産業“青山カレー工房”“熊谷かれーぱん”)の二足の草鞋で多忙な日々を過ごす。近著に「できる人だけが知っている仕事のコツと法則51」(エレファントブックス)。連載執筆にあたり経営者から若手に至るまで、仕事の悩みを募集中。趣味は70年代洋楽と中央競馬。ブログ「熊谷の社長日記」はBLOGOSにも掲載中。
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