裁判は大変すぎる? ならば「労働審判」でブラック企業と戦おう

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事前の書面準備より「口頭でのプレゼン」が重視される面も

   労働審判の判決が不服なら、通常の裁判に移行することもできる。しかし実際には8割が審判だけで解決しているようだ。仮に裁判になったとしても、裁判官は労働審判の判決を重視するからである。

   私の手元には、横浜地裁で2006年以降扱われた105件の労働審判の結果があるのだが、申立棄却(被害者側の原告が負けた)が2件あったのみで、労働審判のみで調停が成立しているのが73件。残りは裁判に移行したものの、和解金支払など相当の成果を得ているものばかりであり、かなりの効果があることがみてとれる。

   労働審判の申立は実際増えている。理由は手続きの迅速さに加え、2名の労使関係に詳しい民間人が審判委員に入っているため、非常識な判断になりにくいことも挙げられよう。

   ここまで述べると、いかにも「申し立てをした従業員側有利」のように見えてしまうが、そうとばかりも言えない。これは労基署に申告する場合とも一緒だが、いかに労働審判官にきちんと事実関係を説明し、証拠をそろえて有利に進められるかにかかっている。

   「事前の書面準備」が重要な裁判に比べて、「口頭でのプレゼン」がより重視される面もある。とくに1回目の審判における審判員の心象で多くが決まってしまうと言われるので、限られた時間の中で、相手の言い分に的確に反論し、こちらの言い分を裏付ける事情を伝える必要がある。

新田 龍(にった・りょう)
ブラック企業アナリスト。早稲田大学卒業後、ブラック企業ランキングワースト企業で事業企画、営業管理、人事採用を歴任。現在はコンサルティング会社を経営。大企業のブラックな実態を告発し、メディアで労働・就職問題を語る。その他、高校や大学でキャリア教育の教鞭を執り、企業や官公庁における講演、研修、人材育成を通して、地道に働くひとが報われる社会を創っているところ。「人生を無駄にしない会社の選び方」(日本実業出版社)など著書多数。ブログ「ドラゴンの抽斗」。ツイッター@nittaryo
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