高い目標を掲げる会社は「ブラック」なのか
終身雇用意識の高まりは、他の調査項目にもあらわれている。同じ調査の中で「今の会社に一生勤めたい」と回答した新入社員は55.5%。過去最高の前年(60.1%)をやや下回っているが、2000年の20.5%から見ると依然として高いレベルだ。
人事部長はさらに、最近よく聞かれる「ブラック企業批判」には、この「会社への帰属意識の高さ」が間接的にかかわっているのではないかと推測する。
「会社で高い目標を課せられて成果を上げられなかった人が、あきらめて転職して再チャレンジすることは以前からよくあったんです。しかし今は『会社を辞めたら終わり』と思う人が多いから、精神的に追い詰められる人が増えているような気がします」
人事部長が不満に思っているのは、高い目標を掲げること自体が「ブラック企業扱い」されることだそうだ。批判者から聞かれるのは、会社には「若者を温かく育てる責任がある」という主張である。
終身雇用はすでに終わりを迎えており、会社はそれを前提としたキャリア制度に転換しようとしている。それなのに新入社員の方は、いまだに「終身雇用の亡霊」に取り付かれて、レールから弾き出すプレッシャーをかける企業を「ブラック」と批判している。
人事部長はこの原因について、彼らの親世代が80年代前後の豊かな時代に働き盛りだった影響があるのではという。時代は変わり、競争や選別のない会社は存在できない。成果を厳しく求めただけでブラックと批判することは、人事部長からすれば「言いがかりだ」というわけである。これもひとつの見方というべきだろうか。