「若者は月収15万円で十分」に賛同? ワタミ会長ツイッター発言の真意

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   飲食店チェーン・ワタミグループ会長の渡邉美樹氏がツイッターとフェイスブックに書き込んだ内容が、ちょっとした議論となっている。「若者は月収15万円で十分」と解される記述に、「安月給を容認するのか」と反発が出たのだ。

   インターネット上で頻繁に「ブラック企業」の批判を受ける渡邉氏。業を煮やしたのかついにブログで反論したが、こちらも少々「勇み足」となった。

「月15万円に満たない現状を嘆いている」とも読めるが…

「月15万でいいならウチで雇ってもいいか」とつい本音が出てしまったのか
「月15万でいいならウチで雇ってもいいか」とつい本音が出てしまったのか

   渡邉氏は2013年6月1日に高知県を訪れ、カツオで有名な久礼大正町市場に足を運んだ。フェイスブックには、魚市場で働く男性と立ち話をする写真が公開され、鮮魚店社長との会話が記されている。

「『若い人たちが漁業で働ける環境をつくりたい。月15万円の収入があれば十分』と言う」

   この発言は文脈上、鮮魚店社長のものの可能性が高い。これに対して渡邉氏は、「日本の漁業平均年齢は、もうすぐ70才へ…。若い人たちが夢を持って働ける職場にしなくては…と思います」と感想を述べた。

   この記述に、ネットで一部の人が敏感に反応した。渡邉氏が「月収15万円で十分」に賛同したと受け取られたからだ。「月15万円で将来の夢が持てるのか」「食べていくのが精いっぱい」との批判もあり、「自分で実践してみたらどうか」「どうせ15万でこきつかうつもりだろう」という意見も見られた。

   掲載文だけでは、渡邉氏が月収15万円を肯定しているとは言い切れない。表現としては不自然ではあるが、月15万円に満たない現状を嘆き、後段にある「若者にとって夢を持てる職場」への希望を強調したかった可能性もないわけではない。

   それでもネット上でこのようは反発がすぐに出たのは、これまで渡邉氏のワタミグループが「ブラック企業」とみなされてきたからだろう。ワタミ子会社が被災地にコールセンターを開設した際、岩手県の最低賃金で募集していたことから「安月給」を容認するイメージがある。

   2012年には従業員の自殺が労災認定され、一部店舗では不適切な時間外労働が取りざたされた。同年7月には、弁護士や大学教授、ジャーナリストらが構成する企画委員会が選ぶ「ブラック企業大賞」、でウェブ投票による「市民賞」に選ばれている。得票数のほぼ半数に達する「支持率」を得てしまったのだ。

時間外労働時間「月38.1時間」、年換算すると労基法違反

   こうした批判に渡邉氏は2013年5月31日、公式ブログで「ワタミグループが一部で『ブラック企業』と呼ばれることについて、一度きちんと皆様にお話させて頂きたいと思っていました」と、自社の正当性を主張した。

   ブラック企業の定義は明確でないとしつつも、その「基準」として「離職率、年収、時間外労働時間、メンタルヘルス不調による休業・退職の人数などがあるようです」と渡邉氏。続けて各項目について、ワタミがきちんとクリアしていると説明を試みる。例えば離職率は、厚生労働省発表の宿泊業・飲食サービス業の数値を下回り、年収では逆に上回っているという。

   時間外労働時間は、ワタミの外食事業の平均は38.1時間で、「36協定で定めた上限45時間を下回っています」という。ひとつひとつの検証結果を挙げたうえで、「一部の情報だけをもって、一方的にワタミグループをブラック企業と呼ぶことは、到底、受け入れられるものではありません」と反論した。

   この説明に対しては「虚偽申告でサービス残業させた分が含まれていないから意味がない」と冷ややかな反応が目立つ。そればかりか反論のために出した数値が、すでに立派な労基法違反になっている可能性があるという指摘もある。

   ブラック企業アナリストの新田龍氏の分析はこうだ。月平均38.1時間であれば、年間では457.2時間に達する。ところが36協定では、1年間の上限として定められているのは360時間だ。

   確かに「特別条項」を適用して労使で合意すれば年720時間まで認められるが、あくまで臨時的措置であり、常態化してはいけない決まりのはず。渡邉氏のブログを読む限りでは、自ら「ブラック企業」と認めたのも同然になってしまうというわけである。

   ブログにはワタミの年間の時間外労働時間が書かれておらず、単純に月平均時間を年間換算した数値ではないかもしれない。「ブラック企業認定」に強く反応したあまり、少々前のめりに書いてしまったのだろうか。

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