時間外労働時間「月38.1時間」、年換算すると労基法違反
こうした批判に渡邉氏は2013年5月31日、公式ブログで「ワタミグループが一部で『ブラック企業』と呼ばれることについて、一度きちんと皆様にお話させて頂きたいと思っていました」と、自社の正当性を主張した。
ブラック企業の定義は明確でないとしつつも、その「基準」として「離職率、年収、時間外労働時間、メンタルヘルス不調による休業・退職の人数などがあるようです」と渡邉氏。続けて各項目について、ワタミがきちんとクリアしていると説明を試みる。例えば離職率は、厚生労働省発表の宿泊業・飲食サービス業の数値を下回り、年収では逆に上回っているという。
時間外労働時間は、ワタミの外食事業の平均は38.1時間で、「36協定で定めた上限45時間を下回っています」という。ひとつひとつの検証結果を挙げたうえで、「一部の情報だけをもって、一方的にワタミグループをブラック企業と呼ぶことは、到底、受け入れられるものではありません」と反論した。
この説明に対しては「虚偽申告でサービス残業させた分が含まれていないから意味がない」と冷ややかな反応が目立つ。そればかりか反論のために出した数値が、すでに立派な労基法違反になっている可能性があるという指摘もある。
ブラック企業アナリストの新田龍氏の分析はこうだ。月平均38.1時間であれば、年間では457.2時間に達する。ところが36協定では、1年間の上限として定められているのは360時間だ。
確かに「特別条項」を適用して労使で合意すれば年720時間まで認められるが、あくまで臨時的措置であり、常態化してはいけない決まりのはず。渡邉氏のブログを読む限りでは、自ら「ブラック企業」と認めたのも同然になってしまうというわけである。
ブログにはワタミの年間の時間外労働時間が書かれておらず、単純に月平均時間を年間換算した数値ではないかもしれない。「ブラック企業認定」に強く反応したあまり、少々前のめりに書いてしまったのだろうか。