モノの見方を変えると「面白いアイデア」が出てくる
デザイナーやアニメーターはいつもトレス台という透写台を使って何枚かのラフを重ねて、下にある絵を透かして統合してデザインを仕上げます。しかし、最後にデザイナーはよく自分の絵を裏かえします。裏から見てもバランスに違和感がないかを確認するのです。
「仕上げの人は裏から絵の具を塗るから、変な絵を描くとすぐわかっちゃうから恥ずかしいんだよね」
知り合いのキャラクターデザイナーは、セル時代によく言っていました。念には念を入れて、グリッド線を引いたガイド板を使って、正確に上下左右のバランスもチェックするデザイナーもいました。
このように、右と左、表と裏。両方から観察するのは絵を整えるためでもあるのですが、実は「おまけ」がついてきます。裏からみると、新しい「デザイン」が発見できるのです。
「絵を描くということは、ものの見方を覚えることだ」。ベティ・エドワーズの『脳の右側で描け』という本にも書かれていますが、鏡に映したり、描いた絵を裏から見るとき、「なにか別の新しいもの」という認識が生まれるわけです。
これは絵だけではなくアイデア全般にいえることだと思います。新しい企画を考えるとき、裏から見てみると意外と「面白いアイデア」が出てくるかも知れませんね。(数井浩子)