前回、インドネシアの経済成長が踊り場を迎えているという話をしましたが、それに伴い就活状況にも変化が生まれています。2012年と比べると「誰でもウェルカム」ではなくなっているということです。
とにかく誰でもいいから来てくれという状況は終わり、自社に必要な能力を持った社員に来て欲しいという意図が、求人票にあらわれるようになってきました。普通の状態に戻ったといえると思います。
いまジャカルタで人気なのは数年前から現地に来ている日本人
インドネシアを始め東南アジア就職の魅力を語ると、なぜか「煽るな」というご意見をいただくことがあるのですが、私はこれまで「海外に行けばすべて解決する」などと無責任なことを言ったつもりはありません。
例えば「新卒で就職するのはおすすめしない」など、私なりに調べ、経験したことを基に紹介していたので、「これだけの爆発的な好景気なのに慎重すぎるのでは」と思われたくらいではないでしょうか。
確かに現実には、ジャカルタではかなり多くの人が新卒で就職をしていましたし、職務経験のない人には発給されないはずの労働ビザも、次々と発給された時期もありました。
しかし、2013年に入ってからは、ビザがなかなか発給されなかったり、発給が却下されることも出てきました。ルールが比較的厳密に適用されるようになったのです。
求人件数自体はさほど減っていないのですが、インドネシア語が必須の案件が増え、特定業界での業務経験など、企業側が要求する要件は厳しくなる傾向にあるそうです。
このような状況になると有利になるのが、すでに現地採用として数年間の職務経験がある人たちです。インドネシア人とコミュニケーションが取れ、業界での経験もある人は、成長するジャカルタで引っ張りだこになっています。
これは、まだ海の物とも山の物ともつかないジャカルタに、勇気を持って飛び込んだことへの報酬であると思います。人と違うことをするのにはリスクが伴いますが、うまく行けばそれ相応のリターンが返ってくるのです。
就職・転職は需要と供給に大きく左右される
まだ他の人が注目していなかった時期から、インドネシア人と一緒に仕事をしたり、インドネシアにある日系企業とのコネクションがあったりする日本人は、いまインドネシアで積極展開をしようとしている企業からしてみれば非常に魅力的な人材なのです。
人材会社の社員も、「優秀な現地採用の人を採用したい会社はたくさんあるのですが、なかなか転職してくれないんですよね」と嘆いていました。きっと数年前までは、ここまで注目されるとは思っていなかったでしょう。
就職・転職というのは、本人の能力以上に、その時点での需要と供給に大きく左右されます。特に、実績を示せない若い人に関してはそれが顕著です。
昨年までジャカルタで就職した人は、このバランスが求職者有利に働いていたため、チャンスを掴める確率が大きかったと思います。そこで掴んだチャンスを活かしてキャリアを積んだ人は、しばらくは仕事に困ることはないと思います。
ただ、この原稿を書いているとき、職歴なしの知人男性がインドネシアの日系企業に内定をもらったと連絡がありました。昨年ほどではないにしろ、ジャカルタにはまだまだチャンスがあります。興味のある方は是非チャレンジしてみてください。(森山たつを)