「社長がなんとかする」という期待が信頼につながる
食品加工機械製造会社のB社長も技術者出身ではあるのですが、とにかく社交的なタイプ。どこで誰と会っているのか把握できないほど、毎日のように外出をしては直帰という行動パターンです。
B社長に会うには、かなり早めのアポ取りが必須です。面談できても、会社の事業のことはあまり話題にあがりませんでした。たいていは、異業種の集まりで面白い話を聞いたとか、有名な経営者や政治家に会ったとか、芸能人とゴルフをしたとか。
経営懇話会でも、会長を務める多忙な上場企業社長をサポートし、副会長として業種を問わず交流し、常に輪の中心で会員企業の経営者から親しまれ頼りにされる存在でした。
A社の社長とは対照的に、B社の“社長外交”は経営危機をきっかけに積極さを増し、東奔西走、さまざまなツテをたどって窮地脱出に向けたあの手この手を打ちました。それが功を奏して「災い転じて福となす」状況になったようです。
A社との一番の違いは、社長の社交力が、社員の信頼感を呼んだこと。「社長が絶対なんとかしてくれるだろう」という期待のもと、ほとんどの社員が欠けることなく会社を支えてくれたことが大きな勝因になったようです。遊んでばかりいるように見えた社長が、経営危機を救うこともあるという話です。(大関暁夫)