「ミスはあってはならない」と言い放つだけでは逆効果
これらの不正行為に共通しているのは、自分のミスを周囲に知られてはまずいという強いプレッシャーが背景にあることだ。
警察官も人の子。誰でもミスをする可能性はある。しかし、ミスをした者が「警察官は常に正しくなくてはならない」という意識にとらわれてしまうと、「ミスなどあってはならない」「上司にばれたら大変だ」と思い詰めて、かえって隠ぺいや改ざんなどの不正行為に及びやすくなってしまう。
不正のトライアングルにあてはめると、ミスをした者が「誰にも言えずに抱え込み」「ミスをうまくごまかせる機会があると考え」「ごまかしても問題ないと正当化する」と、隠ぺいやねつ造などを犯しやすくなる。
警察の「改革」は、管理強化によって「ミスをごまかす機会をなくす」ことに集中しすぎた結果、逆にチェックを形がい化させ、ミスを抱え込ませやすい環境をつくるという悪循環に陥ってしまったのではないだろうか。
もちろん、「だから管理を緩めろ」ということではない。現場の上司は「ミスをしないように気をつけろ」と引き締めつつ、「それでもミスをしてしまったら、隠さずにすぐ上司に報告してほしい」「あとは上司が責任をもつ」「隠ぺいは絶対に許さない」と部下に伝えて、組織内に健全な緊張感を高めることが大切だ。
甘やかすのでもなく委縮させるのでもない。信頼をしつつも任せきりにはしない。そのさじ加減をどう付けられるかが、管理職の力量を示すバロメーターとなる。警察の上層部は「管理強化の弊害」に十分留意し、職員一人ひとりを強さも弱さも持った個性ある人間として育成してもらいたい。(甘粕潔)