「崖の上の師匠」アニメの制作には「仲間」と「師匠」が大事
私の研究は、「先天的な才能が大きく変わることはなくても、環境は変えられる。それならば、アニメの仕事はどういう環境なら上達するのか」と思ったことがきっかけです。どんな仕事もそうだと思いますが、プロジェクトを通して大きく化ける人はいるものです。
論文では、アニメ制作現場ではそのときどきの「仲間」とのつながりが大事であると結論しました。伝統芸能の熟達化研究でも「世界への潜入」「模倣」「型」「間」が大事だと言われてきましたが、それに加えて流動的な「仲間」がアニメ制作には重要なのです。
ジブリ研究の後に進学した大学院のゼミで、教授から「師匠の影響も結構大きいよね」という指摘もいただき、そのゼミの最期に「崖の上の師匠」というプレゼンをしたことがあります。師匠がウルサイほど弟子が育つ、という仮説です。
バカらしい!と思うかもしれませんが、学説も99%が仮説なので、目くじらを立てずにそれぞれの立場からいろいろな議論が出ることが新しい知見を得るために重要なのです。
ジブリ美術館のアニメ研究助成はあまり知られていない事業ですが、アニメ作品と同様にこの「種」も育ててみると意外と面白いのではないかと思っています。(数井浩子)