2012年9月の連載開始以来、最も多く話題に上げてきた地がインドネシアの首都ジャカルタです。今年に入ってからは、日経ビジネスで特集が組まれたり、社長島耕作がビジネスを始めたりと、多くのマスコミにも注目されています。
去年1年間で新規進出した日系企業は200社以上。私も5月にジャカルタを訪れ、現地企業の経営者や働く若者と話をしてきました。しかしそこで多くの人が言っていたのは、「昨年とは風向きが変わった」「景気は踊り場に入ったかもしれない」ということです。
労働者のデモが多発、賃金が急上昇中
ここ10年間、インドネシアの経済成長率は年3.5~5.5%で推移してきました。世界中がマイナス成長に墜ちた2008年のリーマン・ショック前後も含めてです。
2012年も経済成長真っ盛りで、企業業績は右肩上がり。次々と新しいビルが建設され、「世界三大渋滞」と呼ばれていた交通渋滞はその酷さを増し、新しい産業が次々と生まれてきました。
その歩みと共に、ジャカルタ市民の給料は上がり続けています。例えばジャカルタ特別州の労働者の最低賃金(月給)は、1ルピア=100円として2008年の約9700円から2013年の2万2000円まで、5年で2倍以上になっています。
最低賃金がこれなので、一般的なホワイトカラーの上昇率はさらにこれを上回ります。特に伸び率が急激なのが2012年から2013年にかけて、なんと1年で43%以上も上がっているのです。
なぜこんな急激な上がり方をしているのかというと、理由のひとつには大統領選挙があるからと言われています。インドネシアの大統領は5年任期で、2期まで務めることができます。現在のユドヨノ大統領が今年10年目。2014年には、新しい大統領が選ばれることが決まっています。
同時に総選挙が行われることも決まっているため、政治家は完全に国民の信任を得るのに必死。必然的に国民寄りの政策が採られています。最低賃金は法で引き上げられ、それ以上の賃金で働いている人たちも、それに合わせて賃金が上がらないとデモを起こします。